セレッソ大阪初代キャプテンで同クラブ強化部長を務め、現在はエージェントとして活躍している梶野智氏が、2015年3月に関西レジェンドクラブを設立したのだ。関西のJリーグ4クラブに所属していた元プロサッカー選手なら誰でも参加できる組織で、これまでパブリックビューイング開催やレジェンドマッチ出場など意欲的に活動している。次は、どんなサッカーの楽しさを観せてくれるだろう。今、関西レジェンドクラブから、目が離せない。
一般財団法人 関西レジェンドクラブ 代表理事 梶野 智
すべては、一人のレジェンドの想いから始まった。「もう一度、みんなでサッカーをしよう」
――まず、関西レジェンドクラブ立ち上げの経緯を教えてください。
きっかけは、2014年に母校の高校サッカー部のOBマッチに出場したことです。私の出身の愛知県では、県内8つの高校サッカー部のOBマッチが定期的に開催されています。これが、とにかくすごかった。40代~70代までの元選手たちが集まってサッカーをするんですが、みんなすごく真剣で、こんなに面白いことはないと思いました。「これがJでもできたら…」。そう思ったのが始まりです。
――クラブ単位ではなく「関西」でレジェンドを組織化された理由は何でしょうか。
自分を育ててくれた「関西」にこだわりたかったんです。ヤンマーディーゼルサッカー部(現セレッソ大阪)に入ってから、ずっと関西のサッカーに携わってきましたから。それに、Jリーグのことは立ち上げの頃から知っていますし、現在はどこのJクラブにも所属していないので、どのクラブともフラットに接することができます。何よりも、さまざまな人の後押しがありました。
――設立にはサッカー界以外の方々も関わっておられますね。
セレッソ大阪の強化部長を辞めた後、サッカー以外の世界の人たちとたくさん出会いました。サッカーが好きな人もいます。「元選手たちを集めてサッカーをやりたい」と話すと「面白そうだ」と賛同してくれる人が現れ、協力者も増えていった。みんなで定期的にミーティングを開くようになり、関西レジェンドクラブの構想が固まったんです。
――梶野さんの強い気持ちがあったから、巻き込まれる人も増えていったのではないでしょうか。関西レジェンドクラブ設立を宣言されたことからも、気持ちの強さがうかがえます。
今までにないことですから、構想段階では不安もあった。こんなことをして何になるのかと思ったこともあります。だけど、始めたからにはやり遂げたい。だから宣言しました。宣言したからにはやらなければいけないし、責任が生まれます。Jリーグも、1993年に当時の川淵チェアマンが開会を宣言しましたね。関西レジェンドクラブもやり続ける覚悟です。
――その後の活動は順調ですね。
アクションを起こすとまわりも動き出すということを、改めて実感しています。各クラブさんも好意的で、関西レジェンドマッチ2015では主催の京都サンガさんから声をかけていただきました。また、ユニフォームのサプライヤーやスポンサーなど協力してくださる企業さんも集まってくださった。関西レジェンドクラブは、言ってみれば私たちが勝手に始めたことですが、こんなにも支えてくださる人たちがいることには、本当に感謝に堪えません。
――レジェンドたちのポテンシャルの大きさもありますね。
今年1月、震災20年のチャリティマッチでヴィッセル神戸OBと日本代表OBが対戦したのをご覧になりましたか? 素晴らしい試合でした。サッカーの力、レジェンドの力を実感しました。関西のサッカー界、関西のレジェンドたちの力で盛り上げていきますよ!
「人」との出会いとつながりを大切に関西のサッカーを、最高に楽しもう。
――改めて、関西レジェンドクラブの概要について教えてください。
かつて関西のJクラブでプレーした元選手たちの組織です。「プロを引退したサッカー選手たちをつなぐ場であること」「ファン・サポーターも巻き込んでサッカーを楽しむこと」「活動を通じて関西サッカーを盛り上げること」ということを基本方針にしています。クラブの哲学は「本気で」「謙虚に」「最高に楽しむ」。この哲学に賛同してくださる関西のレジェンドなら、誰でも参加できます。
――その哲学には、どんな想いが込められているんでしょうか?
みんなでサッカーを「楽しむ」、ということです。選手たちが楽しんでプレーするからファン・サポーターにも楽しんでもらえるし、本気でプレーするから試合が白熱する。それに、どんなに意義のある活動も楽しくなければ続きませんし、傲慢な態度はまわりにも自分にも悪い影響しか与えません。最高に楽しいから活動が続けられるし、謙虚な姿勢があるからみんなに応援してもらえるんです。
――スタートしたばかりですが、今後はどのような活動をお考えですか?
メンバーを増やして、レジェンドマッチを定例化したい。たとえば、Jリーグのシーズン開幕前には必ずレジェンドマッチが開かれて、4クラブのファン・サポーターがスタジアムで応援を繰り広げるとか。
――開幕への期待感も高まりそうです!
今、関西のJクラブにゆかりのレジェンドは約1,000人にのぼります。プロでの経験も引退後のキャリアもさまざまですが、みんな関西でプレーした仲間たちです。もう一度みんなでサッカーができれば楽しいだろうし、試合後には懇親会を開いてセカンドキャリアも含めて交流したい。サッカーに貢献できる新たなビジネスチャンスも生まれるかもしれません。この世の中、「人」しかいない。すべては人次第だから、サッカーを通じた人との出会いやつながりを大切にしたい。
――その想いは、梶野さんご自身の経験からくるものでしょうか。
現役時代、私は決してうまい選手ではありませんでした。それでもセレッソ大阪でキャプテンを任され、引退後はチームの強化にも関われた。クラブを離れた今も、スポーツコンサルタントとしてエージェントの仕事をさせてもらっています。それはみんな、セレッソ大阪時代にたくさんの出会いがあったからです。現状に満足せず貪欲に上を目指す大切さを教えてくれたネルソン吉村監督、サッカーしか知らなかった私にビジネスの基本を見せてくれた藤井純一社長、元ブラジル代表で代理人としても活躍し現在はブラジル代表ディレクターのジルマールの存在は私にとって大きな財産ですし、レヴィ・クルピ監督は今では私のクライアントで常に連絡を取り合っています。
――関西レジェンドクラブにも、さまざまな人たちの支えがありました。最後に、関西のレジェンドのみなさん、そしてファン・サポーターの方へメッセージをお願いします。
関西レジェンドクラブは、サッカーの力・レジェンドの力で新しいムーブメントをどんどんつくり出していきたいと思っています。関西のレジェンドのみなさん、一緒に関西サッカーを盛り上げていきましょう。そしてファン・サポーターのみなさんに、サッカーの楽しさをもっと伝えていきたいと思っています。
プロフィール
スポーツコンサルタント、JFA登録仲介人、元プロサッカー選手。セレッソ大阪の初代キャプテンであり、チーム強化部長としてクルピ監督を招聘し香川真司や柿谷曜一朗ら日本代表選手を育成した。2015年には関西レジェンドクラブを設立し代表理事に就任。
Text by Michio KII