近藤 岳登 氏 (サッカー解説者・指導者、タレント)
2018年1月に現役引退を発表した、近藤岳登氏。大学時代に一度サッカーを辞めた男は、そのことでサッカーの本当の魅力を知り挑戦することの大切さを学んだという。ヴィッセル神戸でプロデビューしたのは26歳の時。11年間の現役生活を終え、現在はサッカー解説・指導者、ラジオDJなどサッカー界だけでなく様々な分野で新しい挑戦を続けている。
インタビュー/2018.7.17
関西から日本のサッカーが変わるかもしれない。
――ロシアW杯はご覧になられましたか?
クロアチアを応援していました。モドリッチのように上手くて走る選手がいるチームが優勝すれば、トレンドが変わって面白いかなって思ったんですけどね。日本代表は前評判が悪かっただけに、ベスト16は良かったですよね。
――そのW杯にも出たアンドレス・イニエスタ選手がヴィッセル神戸にやって来ました。
日本は住みやすいし、治安も良い。そういうのも含めて破格の3年契約。僕でも絶対に行きますよ(笑) 。でもこの夏の活躍は難しいかもしれません。W杯の疲れもあるし、異なるリーグでシーズン途中からフィットさせるのは簡単じゃないでしょう。でも、ビッグネームがJリーグに来るのはすごいですね。サガン鳥栖にもフェルナンド・トーレスが来ましたからね。鳥栖対神戸の試合は盛り上がると思いますよ。
――スタープレーヤーが来ることでJリーグに変化はあるんでしょうか?
海外メディアも海外選手も「あの2人が行くのか。Jリーグってそんなところなのか」ってなりますね。国内のレベルも上がって、日本代表もまた強くなると思います。日本人選手もそのチームでやりたいってなるし。だから、イニエスタが来たことで関西から日本のサッカーが変わっていく可能性もありますよ。すでにヴィッセル神戸のネームバリューはすごいでしょう。“世界のヴィッセル神戸”ですからね。
プロにまで登り詰めたのだから、みんな、どんな分野でも活躍できる。
――近藤さんは現在所属されている吉本興業さんと、現役中にマネジメント契約を結ばれました。
FC大阪に加入して水戸から大阪に戻ったタイミングで、大学時代の同級生に声をかけられたんです。吉本興業のスポーツ担当で、吉本の持っているメディアとのパイプや様々な企業・行政との取り組みや人脈を活かして、活動の幅を広げていかないかと。担当者が、大学の同級生ということもあり僕のことは良く理解している人間だったし、僕のキャラもこんなんだし(笑)。僕も「お笑い」は大好きだったので、ご縁だと思い即決しました。
――今は吉本坂46(2018年2月に結成発表)に挑戦されています。
乃木坂46の吉本版ですね。今、オーディションでメンバーを絞り込んでいるところです。今年の1月にサッカー選手を引退したばかりで、すぐにこういう企画と出会い新しい挑戦ができたことはすごく良かったです。サッカー選手にとって、プレーする以上の喜びってなかなかないんですよ。でも、オーディションの緊張感の中で自分を表現するのはすごく充実しています。それに現役引退した選手って、サッカー界から飛び出すのを怖がっちゃうんですよ。もちろんその選択を否定するわけじゃないですけど、今までサッカーをやってきて、プロにもなって、誰よりもサッカーを楽しんで努力してきたんだから、ほかのことでも活躍できないわけないじゃないですか。こういうことにもチャレンジできるんだよって見せる良い機会だと思っています。
――これからの活動で、具体的に目指す方向性のイメージはありますか?
今、ラジオDJやトークイベントの仕事も多いのですが、出演者の素顔を引き出すトークをしたいと思っています。特にサッカーに関しては、選手にズバズバ言えるのは僕の強みですからね。サッカー選手のメディア出演が増えていますが、「サッカー選手ってすごい」というイメージが強くて人柄があまり見えてこないことが多いんです。大久保嘉人選手もフィールドでは猛獣ライオンのようなイメージが強いと思うんですけど、本当はめちゃくちゃシャイで。そういうみんなが知らない素敵な部分を引き出して、サッカー選手の魅力をもっと上げたいですね。
改めて気づいた。サッカーが、どれだけ素晴らしく熱くなれるものなのか。
――チャレンジ精神旺盛な近藤さんの原点について教えてください。
大学時代に一度サッカーを辞めたことが大きかったですね。どれだけサッカーって素晴らしくて熱くなれるものなのか、自分にはサッカーしかないんだって、サッカーから離れたからこそ気づくことができました。プロのキャリアのスタートは遅くなりましたけど、それよりもサッカーができる幸せ、サッカーで生活する幸せを意識することができました。
――サッカーを一度辞めた経験は、ご自身にどう影響しましたか?
すごい財産になりました。後悔がないって言ったら嘘にはなります。もっと早くプロになっていたら、もっと動けて活躍できたかもしれない。けど、今こういう活動ができるのも、サッカーを一度辞めた経験があるからです。もう何事にも後悔はしたくない、だから様々な事に挑戦してみようって思った。あの経験は間違いなく僕のターニングポイントだったし、近藤岳登を形作ったひとつだと思います。
――ここまでの道のりを振り返ってください。
紆余曲折を経て、プロになったのは26歳。回り道をしたと思います。でも左右に大きく振れながら歩いてきた分、より幅の広い道ができている。だからこそ、今後はよりたくさんの人に出会えるだろうし、いろんな機会に巡り合えるはずです。細い道だったら途中の障害で行き止まりになってもおかしくはない。様々な経験を通して可能性が広げられたからこそ、立ち止まることはないですね。何にも不可能なことはないと思えるようになりました。
――この道のりを今後はどう歩いていきたいですか。
ここを目指すっていうより、一つひとつ自分の可能性を広げたいですね。やりたいことだらけです。人生でやりたいと思ったことはすべてやっていきたいと思っていますから。今はサッカーにも解説のお仕事で携わっています。この人の解説はわかりやすいし、ワクワクもするなって思わせる解説者になりたいですね。挑戦することしかワクワクすることってないと思うので、そういう意味では人生は常にチャレンジしていくものですね。停滞はありえないです。
――最後にoneの読者にメッセージをお願いします。
人生は挑戦でしかないので、自分の好きなこと、面白いことを貫いたほうがいい。だめだと思ったら辞めていいし、諦めきれなかったらまた挑戦したらいい。チャレンジすることでしか何も生まれない。毎日の生活の中でも、常にチャレンジするほうを選択してほしい。何歳でも関係ないですよ。ワクワクするほうを選択して、ワクワクする人生をおくってください。
近藤 岳登 氏
1981年生まれ。大学時代にサッカーを辞めたものの、再び県リーグのクラブでサッカーを始め、びわこ成蹊スポーツ大学を経て07年にヴィッセル神戸に26歳で入団し6シーズンにわたってプレーした。2014年、当時関西リーグ1部のFC大阪に入団し、同年吉本興業株式会社とマネジメント契約を締結。2018年1月の現役引退後はサッカー解説者・指導者、ラジオDJなど多岐にわたる活躍をみせる。
Text by Yusuke ISHIKAWA