映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』 そのやさしさは、いつまでも消えない光を心に灯す。

やさしさこそ、ほんとうの強さ───世界的な大ヒットを記録した『ワンダー 君は太陽』には、もうひとつの物語があった。あれから6年、いじめっこだったジュリアンを変えたのは〈おばあちゃんのおはなし〉だった。

小説「ワンダー」の作者R・J・パラシオが、「ワンダー」のアナザーストーリーとして書き上げた小説を映画化した『ホワイトバード はじまりのワンダー』が2024年12月6日(金)から全国公開されます。

監督は『ネバーランド』や『プーと大人になった僕』、『007/慰めの報酬』など多様な作品を手掛けたマーク・フォースター。やさしさと美しさ、そして残酷さもあわせもったヒューマンドラマを届けてくれます。

 

『ワンダー』でいじめっこだった問題児の現在。

近年、世界や日本では理解に苦しむようなことが起こっています。正しさってなんだろう、何が正解なのだろう…と考えさせられる場面も増えてきました。薄靄がかかったような割り切れない気持ちが心にあるときは、“やさしい映画”を観たくなるもの。この冬、おすすめしたいのが映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』です。

本作は、興行収入320億円超えのスーパーヒットを記録した映画『ワンダー 君は太陽』のアナザーストーリー。『ワンダー』で普通ではない見た目をした主人公・オギーをいじめていた“問題児”ジュリアンが、転校した学校で居場所を見失っているところからはじまります。

ジュリアンが学校から自宅に戻ると、彼のおばあちゃん・サラの姿がありました。サラは画家として成功しており、今回ニューヨークに来たのも自身の回顧展がメトロポリタン美術館で開催されるため。地位と名誉を手に入れ、気高さをまとうおばあちゃんを前に、少し卑屈になっているジュリアンはかつてを振り返り、「人に意地悪もやさしくもしない。ただ普通に接すること」を学んだと口にします。そんな孫の言葉を聞いたサラは、「あなたのために話すべきね」と少女時代に体験した“衝撃の過去”を告白しはじめます───

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』の一場面

 

物語の舞台は1942年のフランスへ。おしゃれが好きな女の子の平穏な日常が一変する。

ここから、1940年代へと時代がさかのぼります。フランスの片田舎で学校に通うサラはおしゃれが大好きで、ちょっとクセのある同級生に惹かれている女の子。映画を観たり、友だちとおしゃべりしたり、ごく普通の生活を楽しんでいます。しかし、時は1942年、フランスはナチスに占領され、ユダヤ人であるサラと彼女の両親の周辺にも不穏な空気が漂いはじめます。そしてある日、サラの学校にナチス兵士が押し入り、ユダヤ人学生を連行しようとします。逃げ惑うサラに手を差し伸べたのが、同級生のジュリアンです。幼い頃にポリオを患い、その後遺症で足が不自由なジュリアンはクラスメートから“トゥルトー(カニ)”と呼ばれていじめられていました。そんな彼が、自分の本当の名前すら覚えていなかったサラを命がけで助けるのです。

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』の一場面

 

心の中の光となる、初恋の美しさとかわいらしさ。

ジュリアンの両親の協力もあり、サラは彼の家の納屋でひそかに暮らしはじめます。納屋から一歩も外に出られないサラ。その小さな世界に光を灯すのがジュリアンの存在です。話し相手になったり、勉強を教えたり、聡明な彼は適度な距離をとりながらサラを支え、サラも彼の魅力に気づいていきます。このふたりの初恋のシーンはとてもかわいく、美しいのです。狭い納屋のなかで、少年と少女がイマジネーションを膨らませてお互いの世界を広げ、共有していく様子はキラキラと輝いています。観ているこちらにもかわいいきらめきが伝わり、この光が消えないことを願わずにいられませんでした。

とはいえ、納屋の外ではナチスの侵略が強度を増しています。納屋の内(ファンタジー)と外(現実)では世界が違って見え、戦争によって普通の少年と少女が生きづらくなっていく様子が感じとれます。その対比の描き方も、本作の見どころのひとつなのではないでしょうか。

東京国際映画祭でのジャパンプレミアで来日したフォースター監督は、この映画を「戦争という時代背景のなかで描かれる“やさしさ”と“愛”の物語」とし、「戦争のなかでのやさしさとはどういうことなのか、物語を通じて感じてもらいたい」とコメントしています。

さて、サラとジュリアンはどうなるのか? サラの心に灯った光は消えずに輝きつづけるのか? そして、現代に生きる孫のジュリアン(←名前!)はおばあちゃんの話をどう受け止めたのか? ぜひ、映画館で確かめてください。

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』の一場面

 

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』

2024年12月6日(金)より、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、kino cinema 神戸国際

2024年12月13日(金)より、kino cinema 心斎橋 などで公開。

公式サイト:https://whitebird-movie.jp/

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masami urayama

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