幸せとは誰かと分かち合うもの─── 壮大な自然に囲まれたノルウェー西部の山岳地帯「オルデダーレン」。有数のフィヨルドを誇るこの渓谷に暮らす老夫婦の姿を、娘でドキュメンタリー作家のマルグレート・オリンが一年をかけて密着したドキュメンタリー映画『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』が9月20日(金)から全国公開されます。
本プロジェクトに共感した巨匠ヴィム・ヴェンダースと、ノルウェーを代表する大女優リヴ・ウルマンが製作総指揮として参加。本作はノルウェー国内外で大きな話題を呼び、ドキュメンタリー作品でありながらアカデミー賞®のノルウェー代表にも選ばれています。
私たちの初恋の相手は自然でした。
この言葉のあとに年配の男性がザクッザクッと氷の上を歩く姿が映し出され、そのうえにパートナーらしき女性の声が重なります。そして、目の前に広がる凍ったフィヨルド─── この冒頭のシーンを観ただけで多くの人は心を奪われるのではないでしょうか。ノルウェー語で「深く入り込んだ湾」という意味をもつフィヨルドは、太古に北欧全体を覆っていた氷河が溶けだして海へ流れた結果だといわれています。その途方もない歴史を重ねて息づく大自然を前にする、小さな人間。しかし、老父は偉大な自然に臆する様子もなく、ただ静かに立っています。そこが、自分の居場所であるというように。
映画『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』は、ノルウェーの人里離れた渓谷「オルデダーレン」の厳しくも美しい自然と、そこで暮らす年老いた夫婦の一年を追ったドキュメンタリーです。カメラを向けているのは、夫婦の娘であるドキュメンタリー作家マルグレート・オリン。84歳となった父親は、娘と散歩をするようにこの国でもっとも美しい渓谷と呼ばれる場所を歩き、彼の人生や最愛の妻、そして何世代も自然とともに生きてきた人々の暮らしについて語りはじめます。
このあらすじからもわかるように、本作は映画『人生フルーツ』や『ベニシアさんの四季の庭』にも通じるような、自然とともに暮らす人々の人生哲学にふれられる映画です。「おとぎ話を聞かせて」という娘を「散歩に行こう」と誘い、「周りを見てごらん。急ぐと見るのを忘れてしまうよ」という父。何気ない日常のやりとりであった言葉にも人生訓が詰まっていて、ハッとさせられます。
映画館の大画面で観るべき大自然がここにある。
もちろん、本作は壮観な自然を映像で見られるのも大きな魅力です。舞台となったオルデダーレン渓谷は、野生の自然と多様な動物たちが同居している土地。溶けた氷河によって形成された青緑色のオルデバトネット湖や、神秘的な山々に囲まれたフィヨルドの四季には独自の魅力があり、その風景にはいにしえの地球を残しています。
本作では、崩れ落ちる氷河や切り立った断崖が生み出す奇跡のパノラマや夜空に降りてくる七色のオーロラなど、四季折々で見せてくれる姿を追っており、人間には立ち向かうこともできない荘厳さを映し出しています。テレビやパソコンではなく、映画館の大画面で見るべき大自然の映像がここにあるのです。
そして、映像とともに注目してもらいたいのが「音」です。氷がギシギシと軋む音、水滴がピチョンピチョンと跳ねる音、パチパチとはぜる焚き火の音など…どの音も耳を心地よく刺激して気持ちをスッと落ち着かせてくれます。
これら 「地球の音」は、わたしたちの暮らしのなかにもある身近な音。たとえ都会に住んでいたとしても、わたしたちは地球という大きな家の一部として生きている。そのことを、映画の音が思い出させてくるのです。
映画のなかで夫婦は、伝統の歌を口ずさみます。そこではフィヨルドが「美しく険しい 我が家」だと歌われています。マルグレート・オリン監督はこう語ります。「人類が生き残るためには、地球の歌(=Song of Earth)に耳を傾けなければなりません。本作『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』はあなたを野外へといざないます。“エコロジー”という言葉は、“家”を意味する“オイコス”に由来します。そう、自然は私たちの家なのです」。
日本でも、木々が色づく美しい秋の自然が間もなく訪れます。その前に、映画館で「我が家」である地球と、ともに生きる人々の歌に耳を傾けてみませんか?
映画『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』
2024年9月20日(金)より、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸などで公開。
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/songofearth/
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