映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』きっとまた観たくなる。新たなクリスマス映画の誕生!

この日々を、きっと忘れない。───クリスマスホリディに家族が待っている家に帰らず、学校に留まらざるを得なかった人たちが寄り添い、絆を深めていく姿を描いた映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』が6月21日(金)からロードショー!

名匠アレクサンダー・ペインと名優ポール・ジアマッティという『サイドウェイ』コンビが送り出した新作は、あたたかくもちょっぴりほろ苦いクリスマスホリディのドラマ。本年度のアカデミー賞®助演女優賞受賞(ダヴァイン・ジョイ・ランドル)をはじめ、全米で数々の賞を獲得しています。

  

孤独な人たちがクリスマスホリディをともに過ごすと…。

クリスマスは家族と過ごすもの。暮らし方が多様化している現代であってもそう考える人は多く、ましてや1970年のアメリカでは、クリスマスをいっしょに過ごすことが“幸せな家族”の象徴だったのではないでしょうか。

では、クリスマスをともに過ごす家族がいない者たちは孤独でさみしいのか? 本作を観ると、ひとつの答えが見つかるような気がします。

 

物語の舞台は1970年のボストン近郊。名門バートン校は全寮制で、クリスマス休暇になると、ほとんどの生徒や教師は家族とともに過ごすために寮をでていきます。

残ったのは、マジメで融通が利かずに煙たがられている考古学教師のハナム(ポール・ジアマッティ)、母親とのバカンスに行けなくなった生徒・アンガス(ドミニク・セッサ)、寮の料理長メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。メアリーはひとり息子をベトナムで亡くしたばかりで、息子と最後に過ごした学校で年を越そうとしています。

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』のワンシーン

 

クセが強いふたりと、訳ありひとり。こんな3人でクリスマス休暇を過ごすとなっても、最初からうまくいくわけがありません。とくに勉強はできるけど家庭環境が複雑なアンガスは協調性がなく、反抗的。暴走してケガをしたりもします。しかし、根っからゆがんでいない彼は、大人たちが自分と向き合ってくれることで少しずつ心を開いていきます。

そして迎えた、クリスマスの夜。アンガスが「ボストンへ行きたい」といいだし、はじめは反対していたハナム先生もメアリーに説得されて「社会科見学」ならとボストン行きを承諾。考古博物館や古本市、ボウリング場、映画館……とアンガスとハナム先生はクリスマスのボストンを楽しみます。まるで、家族のように。

しかし、アンガスがボストンに来たかったのには理由がありました。一方のハナム先生も二度と会うはずのなかった大学時代の同級生と偶然出会い、複雑な表情を見せます。

ふたりがもつ〈誰にもいっていない秘密〉。それが明かされていくのです……。

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』のワンシーン

 

たった2週間。でも、自分が変わるには十分な時間。

この映画で描かれているクリスマスホリデイは2週間。14日間をともに過ごしただけの3人ですが、お互いを知り、理解しようとすることで変化していきます。それは若者であるアンガスだけでなく、ハナム先生や料理長のメアリーも同じ。他人とふれ合うことでこれまでとは違う景色が見え、自分の枠から飛びだす勇気をもちます。とくに、生徒からも教師からも嫌われている老教師・ハマムの感情が少しずつ豊かになる様子は、とてもキュート。じんわりとあたたかいものが心に広がっていきます。

監督のアレクサンダー・ペインは本作に寄せて「人間的な物語を撮りたい。映画的な人生よりも、実生活に近い主人公とストーリーが好き」とコメントしていますが、確かに主人公であるハマム先生はとても人間くさいキャラクターです。“こんな先生いたかも?”と身近にいた人物のように感じて、感情移入してしまいます。だからこそ、彼の行動にせつなくなってしまうのですが……。

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』のワンシーン

 

本作は、クリスマスに家族と過ごせなかった3人の、たった2週間の物語。大きな事件はないし、劇的なドラマもありません。でも、一生忘れない宝物の日々がここにあり、懐かしい記憶を思い出すように観るも者の心をやさしく癒やします。

クリスマス時期になると、また観たくなる。クリスマスの定番として愛される映画が、ひとつ増えました。

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』のワンシーン

 

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

2024年6月21日(金)より、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸などで公開。

公式サイト:https://www.holdovers.jp/

Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

masami urayama

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