映画『リトル・エッラ』舞台挨拶レポート 人と人の関係性が自然に描かれている絵本にとても惹かれた。

スウェーデン出身の絵本作家ピア・リンデンバウムの『リトルズラタンと大好きなおじさん(未訳)』を原作にした映画『リトル・エッラ』が、シネマート心斎橋などで公開中です。(ちなみに絵本のタイトルで本作の原題にもでてくる“ズラタン”はサッカー選手のズラタン・イブラヒモヴィッチのこと)

主人公のエッラちゃんは、人と仲良くするのがニガテなサッカー好きの女の子。“永遠の親友”であるトミーおじさんをオランダからやってきた恋人・スティーブに「取られちゃう」と思い、同級生のオットーと追い払い大作戦を企てる、キュートなイタズラ感動ストーリーです。

監督は『ロスバンド』で高い評価を得たクリスティアン・ロー。日本公開にあたって初来日し、4月7日(日)にはシネマート心斎橋で舞台挨拶を実施しました。

 

同性であっても関係ない、愛は愛である。

クリスティアン・ロー監督の前作『ロスバンド』は、ロック大会の出場を目指す若者を描いたノルウェー発の青春音楽ロードムービー。日本でも公開され、多くのファンを獲得しています。その監督が新作とともに初来日するとあって、シネマート心斎橋の会場は満席。ファンたちは大きな拍手で監督を迎え、監督も笑顔でそれに応えます。

映画『リトル・エッラ』舞台挨拶でのクリスティアン・ロー監督

今回の舞台挨拶は、北欧ヴィンテージショップFukyaオーナー・三田陽子さんからの質問にクリスティアン・ロー監督が答える形式で進行していきます。まずは「友だちのいないサッカー好きの女の子や同性カップルが当たり前のこととして描かれている」視点を三田さんが質問。

すると監督は映画の原作となった絵本にふれ、「この絵本で大好きだったのはトーミーおじさんとその恋人であるスティーブの関係性です。とても自然に描かれていて、2人が同性であっても関係ない〈愛は愛である〉と。その点がすばらしいと思いました。そして(主人公の)エッラも大好きなトミーおじさんを奪ってしまうのが女性であっても、男性であっても同じで、彼女から親友を奪うのはどちらの性であっても関係なかった」と原作のフラットな視点に惹かれたと明かします。

映画『リトル・エッラ』のワンシーン

 

〈友だちは人生の庭に咲く花〉という言葉は、この映画のメッセージに適している。

本作には〈友だちは人生の庭に咲く花〉という印象的なフレーズがでてきます。この言葉が原作になかったことを質問されると、「これは脚本家のひとりであるサーラ・シェーさんが見つけた言葉です。彼女がどこから引用してきたのかはわかりませんが、この映画のメッセージにとても適したものだと感じました」と監督。

さらに、エッラと同じような子どもだったという三田さんから、自分の子ども時代の体験が映画に反映されているかのかと問われた監督は、「わたし自身にも小さなころに大のお気に入りのおじさんがいました。原作者であるピア・リンデンバウムさんにも同じようにお気に入りのおじさんがいて、それを元にこの絵本を書いたそうですよ」と明かします。さらには、自身を反映したキャラクターはエッダの同級生でいっしょにイタズラの策を考えるオットーだといい、「原作にはない彼のなかに、自分の体験や感情を込めた部分があります」と教えてくれました。

映画『リトル・エッラ』のワンシーン

 

映画のなかで、スウェーデン料理はいろいろな役割を果たしている。

映画ではその土地の料理をアクセントして使うことがよくあり、本作にも〈ポークパンケーキ〉や〈モンスターケーキ〉などが印象的に登場します。北欧の料理をよくつくるという三田さんから「本作での料理の役割は?」と聞かれると、監督は「物語のなかで、食べものはいろいろな役割を果たしてくれました」といいます。「ポークパンケーキは伝統的なスウェーデン料理なのですが、エッラは“なんかつまらない、古くさい食べも”のとして捉えています。実際はおいしいんですけどね(笑)。トミーおじさんは〈フィーカ〉を大事にしています。フィーカとは、スウェーデン人たちが大切にしている習慣でコーヒーといっしょにおいしいおやつを食べて休憩するというもの。そのフィーカで、ちょっと変わったスイーツであるモンスターケーキを食べるのが、人生をワクワクと楽しむことが大好きなトミーには重要なことなのです」。

映画『リトル・エッラ』舞台挨拶でのクリスティアン・ロー監督

また、ノルウェーとスェーデンで映画を制作した経験のある監督は、両国の生活習慣の違いにもふれ、「ノルウェーにはフィーカの文化がありませんが、スウェーデンにはランチの時間以外にもフィーカ休憩があるんですよ。ノルウェーで映画を撮ったときは体重が減ったのですけど、(今回のリトル・エッラを撮った)スウェーデンでは体重が増えちゃいました」と笑いながら打ち明けます。

最後には「映画に登場する三つ子は俳優ではなくて大工さん。〈三つ子株式会社〉という会社を設立していて、おもしろい動画をYoutubeにあげています」という小ネタも披露してくれ、映画同様にキュートでアットホームな雰囲気の舞台挨拶は無事に終了しました。

上映しているシネマート心斎橋では、『リトル・エッラ』のパネル展示もしています。

 

映画『リトル・エッラ』

シネマート心斎橋、アップリンク京都などで公開中。

4月20日(土)から元町映画館で公開。

■公式サイト:https://culturallife.co.jp/little-ella/

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masami urayama

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