「ゴジラ」「ガメラ」「大魔神」シリーズなど数多くの造形を手掛けて怪獣造形の礎をつくったレジェンド、村瀬継蔵さん(88歳)が初総監督を務めた映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』。昭和・平成・令和の著名特撮映画スタッフが集結して完成させた、現代の“新しい”アナログ特撮映画です。
今夏の公開に先駆け、第19回大阪アジアン映画祭のプログラムとして3月2日(土)にシネ・リーブル梅田にて世界初上映。上映後には総監督の村瀬継蔵さん、プロデューサーの佐藤大介さんが登壇し、満員のファンに感謝を伝えました。
はじまりは1970年代に書いたプロット。
今回は、〈大阪発。日本全国、そしてアジアへ!〉をテーマに3月1日(金)〜3月10日(月)まで開催された「19回大阪アジアン映画祭」のプログラムとして上映。会場となったシネ・リーブル梅田には、レジェンドが創造した特撮映画を〈いち早く目撃したい!〉と願うファンたちが詰めかけ、座席はソールドアウトしています。作品上映後には、村瀬継蔵 総監督と作品内に登場する怪獣の頭部の造形を手にした佐藤大介プロデューサーが登場。歓迎の拍手が響き渡るなか、舞台挨拶がスタートします。
映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』の源流となったのが、村瀬さんが1970年代に書いたプロット。当時の村瀬さんは香港・ショウブラザーズが制作した特撮映画『北京原人の逆襲』の造形に携わっており、香港に滞在していました。このとき、プロデューサーのチャイ・ランさんから脚本の執筆を進められ、〈少女が神の筆で世界の破滅を防ぐ物語〉を書きはじめます。「仕事が終わった夜の12時から朝の3時くらいまで毎日がんばって書いていました。出来上がったものをチャイさんに見てもらったら〈おもしろいね。ここ(香港)で撮る?〉っていってくれたのですが、いろいろあって撮ることができなかった。それで日本に持って帰ってきました」と村瀬さん。そのまま映像化されることもなく、45年以上の時間が流れます。とはいえ、その間も村瀬さんは周囲の人にプロットを見せる機会があり、読んだ人からは「短くてもいいから映像にしたら」とすすめられていました。さらに、テレビで村瀬さんの挑戦を取り上げたドキュメンタリー番組が製作された縁もあり、映画制作が本格的に始動。村瀬さんは佐藤さんに「いっしょにやらないか」と声をかけます。
そこから、村瀬さんと佐藤さんは話し合いを繰り返し、村瀬さんが書いたプロットを「今の子どもたちも楽しめるように」とアップデート。1970年代の〈神の筆〉を劇中劇としたストーリーに再構成した2024年版「カミノフデ」を誕生させたのです。
50年近くの歳月を経て完成された本作。村瀬さんは「本当にいろいろなことがありました。非常に大変だったのですけど、佐藤くんがいて、応援してくれる人がいたおかげでがんばれました」と感慨深く振り返っていました。
映画にふさわしい主題歌をつくっていただいた。
本作には、主役の朱莉を演じる鈴木梨央さん、同級生の特撮ファン・卓也役の楢原嵩琉さんをはじめ、斎藤工さん、佐野史郎さん、釈由美子さんなど豪華キャストが出演しています。キャスティングにも村瀬さんの影響が強くあったそうで「本作は当初、短編で製作するはずでした。でも〈村瀬さんが監督をやるんだったら出演しますよ〉といってくれる俳優さんたちがいて、どんどん話が大きくなっていった」と佐藤さん。
また、本作はDREAMS COME TRUEが主題歌を手掛けたことも大きな話題です。ぼくも、きみも怪獣だと歌われるテーマソング「Kaiju」は本作のメッセージを余すところなく表現し、映画の魅力をさらに高めています。この曲を最初に聴いた佐藤さんは「大泣きしてしまった」そうで、「怪獣をつくっている人の曲でもあるし、怪獣ファンのための曲でもある。本当にこの映画の主題歌にふさわしい曲をつくっていただいた」と喜びを語ります。
実はDREAMS COME TRUEの吉田美和さんと村瀬さんは同郷。北海道の池田町出身であるお二人は交流があり、村瀬さんは「昔から美和さんと〈何かいっしょにできるといいね〉と話していて、中村さんも〈村瀬さんと組めるんだったら〉といっていただけました。わたしは怪獣をつくってばかりで音楽のほうはわからないのですが、いっしょに作品をつくれた。本当にありがたい気持ちです」と感謝の言葉を口にします。
大阪は怪獣に愛されている街。上映時には劇場で観てほしい!
1970年代に書いたプロットを、新たなスタッフ・俳優・ミュージシャンなど、多くの人たちの協力によって映像化された本作。村瀬さんも「みなさんに助けられてできた映画」だと繰り返します。
現在88歳、この年齢にしてはじめて総監督を務めた作品をこの夏に届けてくれる村瀬さん。「いま造形の仕事をしている人たちのためにも、(造形を)ずっと残していきたい。恩返しのつもりでこの映画をつくったわけです」と語り、この映画の制作には日本が誇る文化のひとつである〈怪獣造形〉を継承させていく想いもあったと明かします。
さらに、本作が「最初で最後の映画」だといわれることもあるといい、「年齢がいっているからこれで終わりだろうという話なのですが、なんで終わりがあるの?」と疑問を呈し、「次もやってみたい」と意欲をみせます。横にいた佐藤さんは「爆弾発言をされたような…」と驚いた顔を見せつつ「村瀬さんが本当にやるというのなら、ぼくもやります!」と再タッグを願っていました。
舞台挨拶を終え、佐藤さんに本作をお客さまに初披露した感想を聞くと「今日、世界ではじめてお客さまに観ていただくので、どういう反応があるのかドキドキして昨日はまったく眠れませんでした。さきほど上映し、最後に拍手をいただけてよかったです」とホッとした様子。そして、「今まで多くの怪獣に破壊されている大阪は、怪獣に愛されている街だと思います。この怪獣映画も大阪で上映したいと願っていますので、そのときは劇場で観ていただけたらうれしいです」と大阪のファンへメッセージを伝えてくれました。
【ストーリー】
特殊美術造形家・時宮健三が亡くなった。
祖父である時宮の仕事にあまり良い思い出がなかった朱莉は複雑な心境でファン向けのお別れ会を訪れていた。
そこには特撮ファンである同級生の卓也の姿もあった。
朱莉と卓也は時宮の古い知り合いだという穂積と名乗る若い男と出会う。
祖父が映画を作ろうとしていたことを初めて知る朱莉。
穂積はおもむろに鞄から『神の筆』の小道具である筆を手にする。
「世界の破滅を防いでください」
穂積のその言葉とともに朱莉と卓也は光に包み込まれた。
気づくと二人は映画『神の筆』の世界に入り込んでいた。
そして映画に登場しないはずの怪獣ヤマタノオロチがこの世界のすべてを破壊し尽くそうとする光景を目の当たりにする。
元の世界に戻るため、二人は時宮が作るはずだった映画『神の筆』の秘密に迫っていくことに……。
映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』
2024年の夏に全国公開。
出演:鈴木梨央 楢原嵩琉 町田政則 馬越琢己 吉田羽花 樋口真嗣 笠井信輔 春日勇斗 釈由美子 斎藤 工 佐野史郎
原作・総監督:村瀬継蔵
プロデューサー・特撮監督:佐藤大介 脚本:中沢健 音楽:小鷲翔太
主題歌:DREAMS COME TRUE「Kaiju」(DCTrecords/UNIVERSAL SIGMA)
■公式サイト:https://www.kaminofude.com/
配給:ユナイテッドエンタテインメント
©2024 映画「カミノフデ」製作委員会