「伝説のハガキ職人」と呼ばれたツチヤタカユキ氏が、コンテンツ配信サイト”cakes”に連載した私小説を映像化。映画『笑いのカイブツ』がいよいよ来年に公開されます。
笑いにとり憑かれ、笑いのみに人生を捧げた男の痛々しくも純粋な半生を描いた本作。“お笑い映画やろ?”と気軽に観ると、涙と鼻水でグチャグチャになった激情を猛スピード投げつけられ、感情をえぐられます。パンキッシュでエモーショナル、新しいお笑い青春映画の誕生です!
2024年1月5日(金)の公開を控えた2023年11月28日(火)、シネ・リーブル梅田で完成披露舞台挨拶in大阪を実施。主演の岡山天音さん、原作者のツチヤタカユキさん、滝本憲吾監督が登壇し、『笑いのカイブツ』へのたぎる思いを語ってくれました。
岡山さんは現場で『あしたのジョー』のように灰になっていた。
ロケ地である大阪での国内最速上映とあって、会場には熱量の高いファンが駆けつけ満席。登場した岡山天音さん、ツチヤタカユキさん、滝本憲吾監督を大きな拍手で迎えます。最初に岡山さんが「ようやく、みなさんの目に届く日がきたことをとってもうれしく思っています」とあいさつし、滝本監督は「これでもくらえ! という意気込みでつくった力強い映画」だと自信を見せます。
原作者であるツチヤさんはこの日の会場であるシネ・リーブル梅田の近くに住み、よく映画を観にきているそうで「やらしい話ですが、けっこうな金額をこちらの劇場に使っています。この映画が上映されるときには何かしらの特別扱いをしていただきたい!」と上映時のひいきを懇願します。
本作で描かれるのは、笑いに魂を奪われ、笑い以外のすべてがニガテな主人公・ツチヤの半生。強烈なキャラクターを演じた岡山さんは「ここが理解できないな、自分とは遠いな、というのがはじめからなくて。原作を読んだときから、ツチヤというキャラクターに対して〈なんか、わかるな〉というのが自分のなかにありました。“カイブツ”にシンパシーを感じることが果たしてよいのか? はわかりませんが」とすんなり役に入り込めたことを教えてくれます。
自身を演じてもらったツチヤさんは、「すごく尖った役で、岡山さんは自分自身をボコボコにしながら演じていた。現場で観たときも本当に苦しそうで、『あしたのジョー』のラストでジョーが灰になったところみたいに死にかけていて心配になりました」と明かします。
岡山さんも「(演じていて)しんどかったですね。終わってしばらく経っても、ぼぅーとしちゃう感じで」といい、そんな岡山さんの演技を滝本監督は「最高です」とたたえていました。
カイブツと対峙する現場に同世代キャストがいてくれたのが救い。
映画『笑いのカイブツ』には、仲野太賀さん、菅田将暉さん、松本穂香さんといったテレビや映画で存在感を放っている俳優たちが多数出演しています。そんな同世代のキャストたちと共演した岡山さんは「16歳でドラマにではじめたころから、太賀くんや菅田くんが周りにいました。自分のなかのカイブツと対峙する現場で、彼らがいつもの温度で接してくれたことが救いになりました。とてもあたたかかったです」と告白。
滝本監督も、「プロフェッショナルな仕事をしながら、みなさん天音くんをもり立ててくれた。友情も感じられて、〈いいものづくりの環境だな〉と思いました」とチームワークのよさを誇ります。
また、本作はほとんどの出演者が関西弁を話し、主人公であるツチヤも喜怒哀楽の激しい関西弁を使います。演じる岡山さんは東京出身ですが、「方言指導の方にマンツーマンで教わった」という完璧な関西弁を披露。滝本監督も「関西弁を話しながら、ヘビーな気持ちを表現するのは相当大変だったはず」とふりかえります。
とはいえ、今回の会場は大阪・梅田。駆けつけている観客も関西人ばかりのはずです。滝本監督が「チェックされるよね。恐いけど、かかってこい! ですよ」と意気込むと、岡山さんは「やめてください! ぼくはそんなファイティングポーズをとっていませんから」と苦笑いをしていました。
尖った原作がそのまま映画化され、愛を感じる。
本作を演出した滝本監督は大阪出身で、会場となっているシネ・リーブル梅田がある梅田スカイビルでバイトしていたことがあるそう。「ツチヤさんと同様にシネ・リーブル梅田には何回も来たことがあるし、ここでで自分の映画が上映できるのは本当にうれしい。ただ今回来てみて、トンネル(グランブロント大阪からスカイビル方面へと通じる地下道)がなくなっていたのが本当に衝撃でした」と地元民だからわかるトークで共感を得ていました。
そんな地元を舞台にしているため、滝本監督はロケ地選びにもこだわりをみせます。「観光地を見せるのではなく、ちゃんとストーリーにあったところをチョイスして。(大阪の)おもしろい側面を切り取ろうと思って、味のあるところを探しました」。
また、ツチヤさんは自身の体験をベースにした小説が映画化されています。改めて本編の感想を問われると「原作はすごく尖った内容です。映画化ではマイルドな表現になるだろうと思っていたら、原作のままハバネロのように尖り散らかしたまま映画化されています。原作への愛を感じて幸せな気分になりました」と満足そうに語ってくれます。
岡山天音を8倍くらい好きになる映画。
舞台挨拶の終盤、話題は一転してプライベートトークへ。〈今、夢中になっていること〉を問われると、岡山さんは「パフェ」と即答。「店に入って、パフェを食べるつもりがなくても隣の人が食べていたら注文してしまう。レストランに行ってパフェだけ食べて帰ってくることもあります」と意外な素顔を垣間見せてくれました。
楽しく盛り上がった舞台挨拶も終わりを迎え、最後のあいさつの時間に。原作者のツチヤさんは「今日は大阪の方がたくさん来てくださっていると思います。この映画は大阪の映画で、みなさんの映画です。みなさんのなかの〈社をあげて〉応援してください。よろしくお願いします!」と全力サポートを呼びかけ、つづく滝本監督は「2時間たっぷり岡山天音さんを堪能できます。今の4倍、いや8倍くらい天音くんを好きになると思うので、存分に体験してください」と岡山天音さんの魅力がつまった映画であることをアピールします。
トリをまかされた岡山さんは「ここにいらっしゃるみなさん、一人ひとりに『笑いのカイブツ』が届くと思うと、うれしいという言葉では収まらないくらい感慨深い気持ちになっています。どこかの片隅で、こういう風に生きて命をつなげた人間がいたことを観てほしい。そこから先は、みなさんにおまかせします。思いおもいにお楽しみください」と締め、全身全霊を注いで制作した作品がようやく観客に届く喜びと感謝を伝えました。
映画『笑いのカイブツ』
2024年1月5日(金)から、シネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸などで公開。
■公式サイト:https://sundae-films.com/warai-kaibutsu/
2023「笑いのカイブツ」製作委員会