1954年に姿を表し、日本だけでなく世界中に衝撃を与え続けてきた怪獣「ゴジラ」。ゴジラ70周年記念作品である最新作『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』が2023年11月3日(金・祝)の〈ゴジラの日〉に公開スタート。現在、大ヒット上映中です。
最新作の主演を務めるのは神木隆之介さん。ヒロインは浜辺美波さんで、NHK連続テレビ小説「らんまん」で夫婦を演じた二人が共演していることも話題を呼んでいます。
11月5日(日)には大ヒット御礼として大阪・TOHOシネマズ梅田で舞台挨拶が実施され、主役の敷島浩一を演じた神木隆之介さんが登壇。公開前は話せなかった数々のエピソードを披露してくれました。
みなさんの熱量で不安が溶かされている。
舞台挨拶のスタートは11月5日の19時過ぎから。プロ野球・日本シリーズの第7戦、阪神タイガース対オリックス・バファローズの関西対決で勝ったほうが日本一になるという重要な試合が行われている真っ只中です。
登壇した神木隆之介さんは、まず「今日は大事な野球を犠牲にしてまで、ここにいてくださってありがとうございます。早く帰って野球を観たいという気持ちがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」とあいさつします。この日のMCは本作の企画・プロデュースを担当した岸田一晃さんで、関西出身。「今日(お客さんが)来てくれるの? と思っていた」と打ち明け、神木さんは「もうここで流してほしいくらいですよね。いますぐ観戦したい!」と何も映っていない大スクリーンを見上げていました。
11月3日の公開から3日目のこの日、公開後の心境を問われた神木さんは「長きにわたってみなさんに愛されている作品に携わって、主演をやらせてもらう。すごくプレッシャーでした。公開日が近づくにつれ、それがどんどん増していって公開日の前日は本当に寝られなかった」と告白します。
しかし、公開後の好反応に安心を得た様子で「公開当日のお客さんたちの熱量がすごかったし、今日も映画が終わったときにみなさんが拍手をしてくれました。待っているときにそれを聞いて、めちゃくちゃ安心できました」と胸をなでおろします。俳優仲間からの声も届いており、「初日に大東駿介くんから〈めちゃくちゃ良かった〉という意見をもらって、ムロツヨシさんからも〈これから観に行く〉という連絡がきました。観たあとにも〈本当におもしろかった。ステキな作品だった〉という声をいただけているので、ぼくのなかで大きかった不安が、ちょっとずつ溶かされているという感じでございます」。
公開後の評判は、映画に関わった誰もが気になるところ。山崎貴監督も熱心にエゴサーチし「試写会のあとは寝ないでずっとエゴサをしていたみたいで、気づいたら出る時間が過ぎていて遅刻しそうだったといっていました」と明かします。
ネットの意見にはうれしいものも辛辣なものも存在しますが、ゴジラは議論や考察を生みやすい題材。神木さんも「謎が多いゴジラは考察の余地があり、人ぞれぞれの見方や考え方、思想がある。だからこそ長年愛され、今後もつながれていく作品なのだろうと思います」と考えを述べていました。
公開まで情報を解禁できず、「何をしゃべればいいの?」
『ゴジラ-1.0』は公開まで解禁される情報が極端に少なく、ミステリアスな作品。プロモーションでも話せる要素がほぼなかったそうで、俳優たちはインタビューでの回答にこまったと神木さんはいいます。「(水島四郎役の)山田裕貴くんなんて、取材のときは役名しか話してはダメだといわれていてかわいそうでした。〈俺はなにをしゃべったらいいの〉って」。ヒロイン・大石典子役の浜田美波さんも同様にNG項目あり、敷島と典子の人生に大きく関わる小さな女の子・アキコの存在を明かせませんでした。「アキコはふたりの関係に影響する存在で、ぼくらの中心にいる。それがしゃべれないとなると、どうしたらいいのか…。全員が迷っていました」と当時を振り返ります。
公開後の現在は多くの情報が解禁されています。MCから〈今だからいえるエピソードを教えて〉と請われた神木さんは、アキコとのエピソードを披露。「ぼくとアキコが家で遊んでいるときに空襲警報がなるシーンがあるのですが、直前までアキコのご機嫌がななめでした(笑)。ぼくやスタッフがおもちゃなどを使っていっしょに遊び、やっと笑うようになったけど、大きな声でヨーイはかけられません。聞こえるかどうかの感じで〈はい〉と声をかけるから、それではじめてくださいっていわれました」。とはいえ、小さな声の〈はい〉では役に入り込みにくかったそうで「普段の撮影であればデカい声で〈はい〉といってくれたり、物音を立てたりしてくれるんです。それで切り替えられるのですが、このときは小さな〈はい〉で、〈空襲だっ!〉という芝居をしないといけない。めちゃくちゃむずかしかったです」と神木さん。その様子を身振り手振りや声色の強弱で説明してくれるので状況がリアルに想像でき、まるで短い演劇を観ているように引き込まれました。
海のシーンはVFXではなく、命からがらの撮影。
監督・脚本・VFX(視覚効果)を担当した山崎貴監督は、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『永遠の0』などを手がけ、日本のVFXの第一人者ともいわれています。本作でも迫力満点のVFXがみどころのひとつなのですが、VFXがゴジラや街並みをリアルに再現しているため、ロケで撮影された海のシーンもVFXだと勘違いされているそう。
プロデューサーでもあるMCの岸田さんは「敷島たちが追われている海のシーンは、トップスピードで走っている船の上でみなさんに演技をしてもらっている」と説明。つづく神木さんも「トップスピードで走っている船のヘリに立って、足の半分は海にでていました。その状態で(町田健治役の)吉岡さんと山田くんとで機雷を落とさないといけない。監督たちから〈どうか落ちないでください〉といわれましたけど、捕まるところもないんですよ。お互いに支え合うようなカタチでやっていました」と撮影時の状況を語り、「本当に海と戦って、命からがら撮ってきました」と打ち明けます。
また、使用した船は今回の撮影用に制作したもので、映像で観たままの姿で海にでています。神木さん曰く「ボロいし高さもあるから、波に揺られると振り幅がすごい。俺らは生きて帰られるのだろうか? と思いながらやっていた」そうで、改めて海のシーンはVFXではないことを承知してほしいとお願いします。もちろん、危険なことは行っていないため「ちゃんと安全に撮影していますので」と岸田さんからのフォローもしっかり入っていました。
自分がゴジラになったかのような叫び声ができたらいいと思った。
この日は観客からの質問を受け付けるティーチインを実施し、お客さまから〈黒い雨に打たれるシーンがすごかった。どのように演じようと思ったのか〉と問われた神木さん。監督から詳しい演出はなかったとしつつ、ゴジラに街を破壊されるという絶望的な状況で敷島はどういう風になるのかを考えて芝居をしたといいます。「一瞬にして当たり前にあったものが全部なくなる。憎しみ、怒り、絶望、悲しみ…、言葉ではくくれない感情をもって、あいつ(ゴジラ)がやったのだという目で見ていました。黒い雨に打たれて叫ぶところでは、〈自分がゴジラになったかのような叫び声ができたらいい〉と思ったんです。ゴジラが怒ったり、感情をもったりしたら、どうやって叫ぶのだろうと想像しながらやりました」。
さらに、このシーンの撮影日(5月19日)は神木さんの誕生日。「黒い雨に打たれて、黒い姿のままでお祝いしてもらいました」とのエピソードも教えてくれます。
次のお客さまからの質問では過去作品からの影響を質問されます。資料をもらって作品を観たという神木さんは「今回は敷島浩一という人間がゴジラと出会って、どう立ち向かっていくのかというのを表現したかった。なので過去の作品をなぞるのは違うと思いました」とあえて過去作品を参考にしなかったといいます。とはいえ、過去作品それぞれのゴジラのあり方や考え方には感銘を受け、「(過去作品には)ある種の都市伝説のような魅力がすごくあって、だから長年愛されているのだと改めて感じた」と想いを語ってくれました。
最後は「大事な日に足を運んでいただきありがとうございます。情報が解禁されたのでこれまで話せなかったことを話せてうれしかったし、実際にみなさまの質問を聞けて楽しかったです」と改めて感謝を伝えた神木さん。大きな拍手に包まれて舞台挨拶は終了しました。
映画『ゴジラ-1.0』
2023年11月3日(金)から、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸などで公開中。