現在、全国公開中の映画『ロストケア』。介護という現代社会の課題をテーマにし、松山ケンイチと長澤まさみの演技バトルが繰り広げられることでも話題の社会派エンターテインメントです。
4月28日(金)には、TOHOシネマズららぽーと門真のオープン記念として松山ケンイチさん、鈴鹿央士さん、前田哲 監督が舞台挨拶。新しくオープンした映画館を祝福するとともに、公開後に届いた感想なども披露してくれました。
たこやきは、ソース派? 塩派?
今回の舞台挨拶は、4月17日にグランドオープンした「TOHOシネマズららぽーと門真」のオープン記念として開催されました。会場となったのは大規模スクリーンを設置したプレミアムシアターで、映像や音、鑑賞環境にこだわったハイエンドなつくり。最初のあいさつで松山ケンイチさんは「(ほかの映画館と)壁紙が違う。スクリーンもものすごく大きいし、この劇場でぼくも観たい」と豪華な仕様に見惚れた様子。つづく鈴鹿央士さんが「スピーカーが大きい」ことに注目すると、前田哲監督は「非常口のマークも大きくない?」と他劇場との違いを発見し合い、場を和ませます。
〈大阪〉がテーマのトークになると、岡山出身の鈴鹿さんは「東京より大阪のほうが近いので、修学旅行や家族とユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に来ていました」と教えてくれます。さらに「たこやき」が思い出の味だというと、「さっきも楽屋ですごい勢いで食べていましたよ」と松山さんに暴露されます。
今回、たこやきは定番の〈ソース味〉とあっさりした〈塩味〉の2種が用意されており、大阪出身の前田監督は意外にも塩味を推していたそう。しかし、松山さんも鈴鹿さんも「ソースのほうが好き」だと答え、たこやきの味対決は定番のソースに軍配が上がっていました。
若い世代にも届いてうれしい。
映画『ロストケア』は全国公開されて一ヶ月が経過、登壇者たちはさまざまな感想を見聞きしています。松山さんはそれから学ぶことも多いといい「ぼくはまだ介護される立場になっていないし、介護する側としても(演じている)斯波とお父さんのような関係性になっていない。まだわかっていな部分もあるのですが、実際に体験している人からの感想にはそれが書いてあります。本当にじっくり読ませていただいて、自分のなかにきちんと残っています」。
松山さんが演じる斯波宗典は、介護士でありながら42人を殺めた殺人犯。彼を裁こうとする検事・大友秀美として長澤まさみさんが対峙し、鈴鹿さんは長澤さんの同僚で得意な数学で事件にアプローチしていく検察事務官・椎名幸太を熱演しています。
近年数多くの人気ドラマにも出演し、若者からの支持も高い鈴鹿さんは、若い世代からの感想もよく受け取っているそう。「今日も20代の方かな、目に入ってきます。そういう世代から〈介護ってあんまり考えたことなかったけど、この映画を観て家族と話す時間をつくろうと思った〉や〈友だちが鑑賞後に介護の仕事をしたいっていっていた〉など言葉にしてくれて。ぼくと同世代の方にも届いてうれしいです。壮大だけど、これから日本を背負っていく世代の人たちに(介護という)ひとつ意識が芽生えたら、いい社会になるんじゃないかなと思っています」と熱い想いを伝えてくれます。
ただ、鈴鹿さんのすばらしいコメントを松山さんは半分しか聞いていなかったらしく「(鈴鹿さんが)20代の方がチラホラいるっていってたけど、ほくは〈全員20代に見える〉っていったほうがよかったんじゃないかなってずっと考えていて。半分ぐらいしか聞いていなかった。ごめん!」と笑いを誘う場面もありました。
松山さんのギャップが凄すぎて、頭がバグる(笑)。
舞台挨拶では、テンポよく会話する松山さんと鈴鹿さん。映画では犯人と検察事務官という立場だったので、ほとんど話をしたことがなかったのだとか。「長澤さんとは健康についての話などをよくしていたのですが、松山さんはひとりでいたし、ちょっと怖かった」と鈴鹿さん。そのため、撮影後に会う松山さんのフランクさに驚くそうで「ギャップが凄すぎて、ときどき頭がバグります(笑)。(松山さんは)どんな人なんだろう?って」と白状します。
そういわれた松山さんが「ここにいるお客さんも央士のことをわからないと思うよ。みんなに見せたことがないものはない?」と返すと、「この感じのまま」と鈴鹿さん。
とはいえ、役者は本人のイメージとは異なるキャラクターを演じられます。鈴鹿さんが「まだやったことのない、極悪非道な役をやってみたい」というと、客席にいたファンからも「見てみたい」という声が。前田監督も「殺人鬼とか、いけますね」と太鼓判を押していました。
介護はポジティブなところもある。過酷な面だけを演じるのは、やめようと思った。
最後のあいさつの段階になったとき、松山さんは撮影中に宿泊していたホテルでの印象的な出来事に言及します。「温泉のある有名なホテルで、いろいろな方が温泉に入って来られました。そのなかに父子がいて、息子さんはお父さんの介護をされていた。脱衣場では息子さんが一枚一枚お父さんの服を脱がせて、温泉に入っても息子さんから〈天気がよくて気持ちいいなぁ〉ってお父さんに話しかけている。お父さんはわかっているような、わかっていないような表情をしていたのですが、息子さんはすごくやわらかい顔で笑っていたんですよね。撮影中にその親子を実際に見て、自分のなかでずっと残っていました。
介護というのは壮絶だったりするのだけど、幸せというかポジティブな面も必ずある。だから、(介護を扱う本作で)一方だけを演じるのはやめようと思ったんです」と自身のもつ介護への考えや演じ方への思いを真摯に語ってくれました。
前田監督も「この映画は介護という題材を扱っていますが、ぼくのなかでは親子の物語だと思っています。親が子を、子が親を思うがゆえにいろんな物語が生まれてくる。この映画はそのうちのひとつだと思ってもらえれば、みなさんにも共感してもらえるのではないかなと感じています」とつづけます。
さらに前田監督は、この映画の新たなキャッチコピーを考えたといい「モヤる映画」というワードを披露。「鑑賞後にスカッとせず、モヤる。でも、気持ちの悪い感じではなく、少し爽快感のあるモヤです。公開から一ヶ月が経ちましたがもっと上映したいので、ここのみなさんの力を借りてモヤる映画を広めていただければ。よろしくお願いします」と締め、舞台挨拶は終了しました。
映画『ロストケア』
TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、OSシネマズミント神戸、シネ・リーブル神戸などで公開中。
公式サイト:https://lost-care.com/
配給:東京テアトル 日活
©2023「ロストケア」製作委員会