映画『ロストケア』舞台挨拶。松山ケンイチと長澤まさみの芝居をみんなに届けたい。

松山ケンイチ×長澤まさみ。人気も実力も兼ね備えた当代きっての俳優二人が演技で激突する社会派エンターテインメント映画『ロストケア』が絶賛公開中です。〈介護〉という日本が抱える大きな問題に鋭く切り込んだ本作。「自分事として深く考えさせられる」とSNSなどでも話題になっています。

3月26日(日)には公開を記念した舞台挨拶を大阪・TOHOシネマズ梅田で開催し、松山ケンイチさん、長澤まさみさん、前田哲監督が登壇。作品に込めた想いや撮影秘話などをたっぷり語ってくれました。

 

背中をさすってあげたり、押してあげたりできるような作品。

本編鑑賞後、重厚な内容を受け止めて多様な想いを抱いた観客たちは、熱のこもった拍手で松山ケンイチさん、長澤まさみさん、前田哲監督を迎えます。

舞台に上がった3人は、その熱気に応えるように笑顔であいさつ。介護士でありながら42人を殺めた殺人犯・斯波宗典を演じた松山さん、斯波を裁こうとする検事・大友秀美を演じた長澤さんが来場への感謝を伝えます。つづく前田監督は「生まれ育った場所で、みなさんの前で上映できて本当にうれしいです」と出身地である大阪での上映を喜びます。

 

映画『ロストケア』は、現代日本が抱える〈介護〉という問題に切り込んだ葉真中 顕さんの第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作の映像化。感動とともに強い衝撃も感じる内容は、観た人を自問自答させる深い余韻を残します。

演じるキャストにもその感想は届いているようで、「自分の人生について考えさせられる、自分の周りの環境のなかに穴があることを認識せざるを得ない、といった感想がありました」と松山さん。そのうえで、「すごく重い題材だと思うのですが、背中をさすってあげたり、押してあげたりできるような作品だと思っている」と語り本作への自信をのぞかせます。

共演する長澤さんのところにも多くの声が届いており、「仲間や先輩から〈いい映画をつくったね〉とほめてもらえましたし、実際に介護をしている人たちからも〈いいものを観た〉という声がたくさんありました。この作品に関われて本当によかったです」と充実感を口にします。

 

そんな二人を演出した前田監督に届けられる声は、自身の演出への評価ではないそう。「ぼくのところに来るのは、松山ケンイチと長澤まさみがすごい演技をしていて、ものすごく心に響いたというものばかり。ぼくをほめてくれるものが全然ない」と明かすと、「そのシーンをつくっているのは間違いなく監督ですから」と松山さんがすかさずフォローします。

とはいえ演出をした前田監督は、演技が絶賛されるのが一番だといいます。「二人の芝居を現場で見ていて震えていました。これをみなさんに届けなきゃいけないという思いがすごくあって、カメラワークやカット割りをいろいろ考えたんです。今は、それがお届けできたのかなと思っています」。

映画『ロストケア』舞台挨拶・大阪での松山ケンイチさん。

 

ケンちゃん&マーちゃんで漫才デビュー!?

今回の舞台挨拶は上映後の開催。深淵な問題をテーマにした内容なので、どのように迎えられるのか? 緊張したという松山さん。その緊張を紛らわすために舞台袖で長澤さんにムチャぶりをし、ヒラヒラとしたブラウスを着ていたことから「〈イカ焼きで〜す〉っていってよ、マーちゃん」とお願いしたのだとか。それを受けた長澤さんは、「突然やれっていわれて、(自分が)ちょっとおかしくなったと思われたら困るんだけど…」と困惑します。しかし、舞台に上がるとブラウスをヒラヒラさせてイカ焼きポーズをしっかり披露。大阪のお客さんからの笑いを獲得していました。ちなみに前田監督は、ステキな衣装をまとった長澤さんを見て、「天使ちゃん」と表現したそうです。

 

また、長澤さんは松山さんがなぜこんなにも緊張しているのかを説明してくれます。「公開を誰よりも楽しみにしていたのが、ケンちゃんと前田監督。(鑑賞後の)お客さんの気持ちや余韻をすごく大切にしたいという思いがあるから、(舞台挨拶に)どういう風にでていけばいいのか? みんなで悩んでいました」。

 

この会話からもわかるように、松山さんと長澤さんは互いを「ケンちゃん」「マーちゃん」と呼び合っています。前田監督が「ケンちゃん、マーちゃんで、漫才コンビを組んでデビューするらしいですよ」というと「いやいや、マーちゃん、ケンちゃん、テッちゃん(前田監督のこと)のトリオでしょ!」と松山さん。漫才の本場である大阪で掛け合いトークを実演し、コンビネーションのよさをみせてくれました。

映画『ロストケア』舞台挨拶・大阪での前田哲監督。

 

松山さんと初共演できるのが、この作品でよかった。

絶妙な掛け合いで舞台挨拶を盛り上げてくれる松山さんと長澤さん、実は本作が初共演。その貴重な機会を大切にしたと松山さんはいいます。「(長澤さんが出演している)映画やドラマは観ていたのですが、話したことはありませんでした。この〈話したことがない〉というのをきちんと使いたかった。話したことのない人との初共演は一回しかできません。お互いのバックグラウンドがわからない状態で本番のセリフをいうと、何か生まれてくるものがあるんじゃないかなって」と特別な状況を活かした芝居であったことを教えてくれます。

一方の長澤さんは松山さんとの共演をとても楽しみにしていたそうで、「ケンちゃんは憧れの先輩。いっしょにお芝居をするのは緊張したのですが、怖じけずにやれることをやりたいという思いがありました」と告白。さらに「共演できたのが、今でよかった」と打ち明けます。「(作品のなかでの)俳優の組み合わせはとても大切でむずかしいもの。自分が求めていても、ハマりが悪かったりすることもあります。そういったなかで、今回ケンちゃんと初共演できたのは運命です。二人のはじめての会話がこの作品のセリフで、その感じが映画に焼きついています」と、初共演のケミストリーが作品に好影響をもたらした手応えを語ってくれます。

 

実力派俳優たちの対峙は、映画の内容を〈他人事にしない〉リアルさを与えています。だからこそ、多くの人は〈自分事として〉考えられるのではないでしょうか。

長澤さんは、本作を多くの人に観てもらいたいとの願いを伝えます。「どうやったらたくさんの人に観てもらえるのか? という話をこんなにする作品はなかなかありません。作り手の想いがとてもつまった作品を、ぜひ映画館で観てください」。

映画『ロストケア』舞台挨拶での長澤まさみさん。

 

映画『ロストケア』

TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸、シネ・リーブル神戸などで公開中。

公式サイト:https://lost-care.com/

配給:東京テアトル 日活

©2023「ロストケア」製作委員会

masami urayama

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