娘を殺された元夫婦と犯行時に未成年だった加害者の女性。癒やしようのない苦しみに囚われた3人の葛藤を見すえ、魂の救済、赦しという深遠なテーマに真っ向から挑んだ問題作『赦し』。関西ではシネ・リーブル梅田ほかにて3月24日(金)より公開されます。
3月11日(土)、公開に先立って「大阪アジアン映画祭 コンペティション部門」で上映。主演の尚玄さん、夏奈役に抜擢された松浦りょうさん、アンシュル・チョウハン監督が登壇し、舞台挨拶を行いました。
コロナになって、映画化すべきだと思った。
本作上映後に尚玄さん、松浦りょうさん、アンシュル・チョウハン監督が登場。まずは監督が「ご来場いただきありがとうございます。大阪アジアン映画祭で上映でき、皆さんの前であいさつできることを嬉しく思っています。皆さんにこの映画を楽しんでいただけたのか気になっているので、Q&Aを楽しみにしています」あいさつし、尚玄さんも「ジャパンプレミアで大阪アジアン映画祭に戻ってこられて嬉しいです」と喜びを口にします。
つづいて、Q&Aへ。最初に「大変興味深く拝見させていただきました。観た人それぞれの視点がある作品だと思います。特に、ポスターにも使われている松浦さんの振り返りのショットが印象的でした。彼女の表情にどのような演出をされたのでしょうか」という質問が飛び出し、チョウハン監督は「これは12テイク目でした。こういうものにしたいというイメージが自分の中にあったので、テイクを重ねて彼女の肩の位置や傾き加減など細かく指示をしました」と明かしてくれます。さらに、「映画の中でも特に大事なシーンになるので、観客の皆さんを見ているのか見ていないのか絶妙なバランスを意識して、自分の目指すイメージを意識して撮影しました」とこだわりの見せ方を語ります。
次の「当初の脚本から撮影時の脚本に落とし込むまでに大きく変わったことはありますか?」という質問に対して、チョウハン監督は「2018年に初めて脚本を読んだ時は映画化する気持ちまで持っていけなかった」と当初の胸の内を打ち明けます。しかし、その後「コロナになって誰もが家に閉じこもるようになったときに読み返して、これは映画化すべきだと思いました。それからは、少年法など日本の法律に沿って変わった部分や実際に裁判へ赴いて細かいところ調査しながら脚本を改正していきました」と時流や日本に合わせて脚本を変えていったことを教えてくれました。
役づくりは、すべてが大変だった。
演じる尚玄さん・松浦さんへは「役づくりの過程で一番むずしかったことは?」という質問がでます。主演の尚玄さんは、「すべてが大変でした」と前置きしつつ、「ぼくは当事者ではないので、当事者じゃない人間がその人の抱えているものをリアルに表現できるのか? ということに対してすごく真摯に向き合いました」と語り、「(松浦)りょうちゃんと対峙している場面は芝居ではなかった。監督の指示もありましたし、撮影が終わるまで一言も話さなかったです」と緊張感が漂っていた対峙シーンの裏側を披露します。さらに、「監督が早い段階で衣装を用意してくれたことがすごく幸運だった」とし、「3週間前から衣装を着て、(役の)克として生活していました」と役に向き合い続けた日々を振り返ります。
加害者の女性・夏奈というむずかしい役に挑んだ松浦さんは、「私は殺人を犯したことも刑務所に入ったこともありません。役づくりとして経験できることではないので、殺人を犯してしまった方のインタビューを見て、役に落とし込んで考えました。そのうえで、刑務所の生活にできるだけ近い生活をして孤独を知ることで役を作り上げていきました。その時間が一番しんどかったです」とストイックな役づくりを明かしてくれます。
このように多くの質問が飛び出し、盛り上がった舞台挨拶。登壇者たちは観客からの大きな拍手で見送られ、笑顔で舞台をあとにしました。
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映画『赦し』
3月24日(金)より、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸にて公開。