《白》と《黒》のみで描かれる【水墨画】を《色鮮やかな世界》としてまばゆいほどみずみずしく描いた青春映画『線は、僕を描く』。公開記念舞台挨拶 in 大阪が10月24日(月)、TOHOシネマズ梅田で開催されました。会場には、メガホンをとった小泉徳宏監督、キャストの横浜流星さん、清原果耶さんが登場。映画への想いや本作のテーマとなる水墨画の魅力を語り、最後には横浜流星さんの大阪弁も飛び出して大いに盛り上がりました。
映画を観たあとの、“今”の思いを大事にしてほしい。
映画『線は、僕を描く』は、2020年「本屋大賞」3位を受賞し、全国の書店員から絶賛された砥上裕將さんの青春芸術小説を、小泉徳宏監督を筆頭とした『ちはやふる』製作チームが再結集して完成させた青春映画。白と黒だけで表現される水墨画の世界を舞台とし、その美しさにふれて魅了された大学生・青山霜介の成長と再生を描いています。
舞台挨拶は本編上映後に開かれ、満員の観客が大きな拍手で小泉徳宏監督、横浜流星さん、清原果耶さんを迎えます。主人公・青山霜介を演じた横浜さんは「映画を観ているみなさんを横から見ていました。見終わったあとに拍手をしていただき、とてもうれしい気持ちです」と作品が観客に届いている手応えを口にし、「短い間ですが、楽しい時間にしたいと思います」とあいさつ。霜介にライバル心を抱く篠田千瑛を強く美しく演じた清原果耶さんは「まさか大阪で舞台挨拶ができると思っていなかった」と故郷の舞台に立てることを喜び、笑顔で観客に手を振ります。また、小泉監督はTOHOシネマズ梅田で舞台挨拶をした経験が何度かあるようで、「『ちはやふる』のときもここでした。コロナなどいろいろありましたが、再び戻ってこられてうれしい」とコロナ禍という困難な状況を乗り越えて制作した作品を大阪に届けられたことに感謝していました。
この日の司会は、読売テレビアナウンサーの林マオさん。実は、本作にも出演しています。その林さんから、〈本作を観てどう感じてほしい?〉と質問されると、「それぞれに受けとめ方が違うと思いますが、“今”、みなさんが思っていることを大事にしてほしい」と横浜さん。清原さんは「観終わったあとに、わたしは“明日から精一杯がんばって生きていこう”と思えました。そんなポジティブな明るい気持ちを今日もって帰ってもらえたらうれしいです」と自身の鑑賞後の感想を踏まえて答えます。つづく小泉監督は「みなさんが感じられたことが正解。わたしからはあえていうことはありません」としつつも、「やさしい映画になっていると思っています。(映画を観て)やさしい気持ちになってもらえたらいいですね」と制作者としての想いを述べてくれました。
滋賀は、なんにも染まっていない少年のよう。
映画『線は、僕を描く』は、滋賀と京都でオールロケを行っています。地域の魅力は映画にも大いに影響しているようで、「スイカを割ってニワトリが群がるシーンは、ロケハンで訪ねたときに地元の方がおもむろにスイカを食べだしたのがきっかけ。すごいことになって、これは映画に取り入れようと元々はなかったシーンを加えました」と小泉監督。さらに、キャストも地元の人たちとのあたたかいふれあいがあり、横浜さんはおにぎりをもらったりしたそうです。
すると、滋賀で何度も映画撮影をしている小泉監督に、司会の林アナから〈滋賀の魅力を一言でいうと?〉という難題がだされます。一瞬考えた監督は「なんにも染まっていない少年のような感じ。特定のイメージが固定されていないから、日本のどこにでもなれます。自由に、なんにでもなれるところが霜介っぽいですね」と絶妙な返しをします。
ロケをした滋賀や京都は多くの観光地を有する魅力的な街ですが、スタッフや出演者は地域を楽しむ余裕がなかったのだとか。ただし、食に関しては堪能したようで「とくにこの映画は食事がうるおっていました。滋賀では近江牛を食べて、とてもおいしかった! 」と語る横浜さんは、「次は観光もしてみたい」と関西に戻ってくることを願っていました。
水墨画は、出会えてよかった日本の文化。
舞台挨拶では、お客さまからの感想や質問を受け付けるティーチインイベントも実施。司会者が質問のある人を募ると多くの観客が手を上げ、登壇者から「さすが大阪」との声が上がります。そのなかのひとりから〈演じる前と後で水墨画に対するイメージが変わりましたか?〉と問われると、横浜さんは「最初は遠いものだと思っていて、自分に描けるのか不安だった」と当初の心境を吐露します。しかし、指導を受けていくうちにどんどん魅力に取り憑かれ、「監修の小林東雲先生が〈絵を見ると、その人がわかる〉というくらい、そのときの感情が線にでるんです。自分と向き合うことができる水墨画を、ぼくは大好きになりました」と目を輝かせます。
もちろん、水墨画にふれて魅了されたのは清原さんも同じ。「この作品で水墨画を描くと聞いたとき、“わたしにできるの?”と思いました。練習期間を設けてもらうとはいえ、演じる千瑛ははじめからうまく描けないといけない役なので、大丈夫なのかと。でも、東雲先生から〈水墨画には、間違いも、NGもない〉と声をかけられてすごく気が楽になったんです。描いていて少しハネても、“これはこれでイキがよくていいか”と楽しく向き合えました。出会えてよかった日本文化です」と中国から伝わり日本に根づいた芸術のすばらしさを誇らしく語ってくれました。
楽しい舞台挨拶も終わりに近づき、登壇者を代表して主演の横浜さんがあいさつ。「みなさんのお顔を観られ、さらに熱い感想をくださって本当にうれしいです。もっともっと多くの方に届いてほしいので、みなさんが心に思っていることを周りの人に伝えたり、SNSで発信したりして、この作品を大きくしてください」と願います。さらに、林アナから〈大阪弁も入れて!〉とむちゃぶりされたこともあり、最後は「ホントに、ホントに、今日はおおきに!」と大阪弁で締めてくれました。
映画『線は、僕を描く』
2022年10月21日(金)より、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ二条、ユナイテッド・シネマ大津、TOHOシネマズ橿原、ジストシネマ和歌山などで公開中。