ポップアートの旗手として、アメリカ大量消費社会の光と影を描いたアンディ・ウォーホル。商業イラストレーターとして活躍していた初期の作品から、晩年の大作までを網羅した大回顧展「アンディ・ウォーホル・キョウト/ ANDY WARHOL KYOTO」が、本日9月17日から京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」で開幕!(〜2023年2月12日まで)
門外不出の《三つのマリリン》など100点以上の日本初公開作品を含む約200点が一挙展示されています。巡回せず、京都だけの開催となる本展。貴重な機会をお見逃しなく!
ウォーホルは2回、京都を訪れていた。
今回の大回顧展が〈京都〉という土地で開催されているのには意味があります。アンディ・ウォーホルは生涯で2回、京都を訪れており、この地で受けた刺激が彼の作品に大きな影響を与えているといわれています。アンディ・ウォーホルと京都。その美しい関係を、本展でふれることができるのです。
1956年、ウォーホルははじめて京都を訪れました。当時の彼は富と名声を求めて故郷のピッツバーグからニューヨークにでてきたころ。商業イラストレーターとして成功し、世界一周旅行をするだけの資金を得た若者は、旅するひとつの場所として京都に足を踏み入れます。都ホテルに泊まり、あちこち散策して異国の文化を体験したウォーホルは、清水寺や三十三間堂などの寺院をはじめ、舞妓、僧侶などのスケッチを残しています。
本展に展示されているそれらドローイングはボールペンですらすらと描かれたシンプルな作品なのですが、ウォーホルらしいシニカルさやユニークさがしっかり宿っています。ウォーホルはきっとワクワクしながらスケッチしたのだろうなと思わせる楽しさがあり、彼が長年にわたり日本に関心をもっていたのはこの旅があったからだと作品を観て感じ取れます。
そして、二度目の京都訪問は1974年。ポップアートの旗手となった彼はスターとして歓迎され、「徹子の部屋」などテレビにも出演しています。有名になる前に旅した1956年の京都と、セレブになって訪れた1974年の京都。彼の目にはどのように映ったのでしょうか?
今回は1974年に日本から依頼を受けたて制作した《生花シリーズ》も展示されています。1回目のドローイングと見比べて、受ける印象の違いや変化を楽しめるのも本展の魅力のひとつなのではないでしょうか。
《三つのマリリン》など、誰もが知るウォーホル作品も豊富。
本展には〈ウォーホルといえばコレ!〉という作品もたくさん展示されています。キャンベル・スープ、ブリロの箱、セレブの肖像画……、有名な作品たちを目にすると、“ウォーホルの展覧会を観に来た”という満足感もしっかり得られます。
そのなかでも、ひときわ目を引くのは日本初公開である《三つのマリリン》。子供のころからハリウッドの映画スターに憧れをもっていたウォーホルは、マリリン・モンローの悲劇的な死に触発を受け作品を制作します。シルクスクリーン印刷という当時の最新技法を用いて制作された作品は、華やかで洒落ているのに、内からにじみ出るさみしげな影を浮き彫りにしています。サイズはそれほど大きくないのですが、存在感はピカイチ。同じように見えて異なる、3つのマリリンの表情は何を訴えているのか? ポップアートは意図的にエモーショナルな部分を排除している作品も多いのですが、わたしにはこの《三つのマリリン》はとてもエモーショナルな印象も受けました。
また、今回は大回顧展。アンディ・ウォーホルがアンディ・ウォーホルになる前の初期の作品からボップアートのスターとなって華やかにふるまいながら新しいカルチャーを創作していた時期、そして死や宗教を色濃く表現した晩年の作品までを網羅しています。
レオナルド・ダ・ビンチの有名なフレスコ画を参照した晩年の大作《最後の晩餐》は、完成後にミラノで発表されて以来、展示は今回が初。ウォーホルが敬虔なカトリック信者であったことを知らなかったわたしは、彼が彼なりの宗教画を描いていたことにとても驚きました。もちろん、そこにはウォーホルらしい遊び心があり、ダ・ビンチの作品を解体して現代風にコラージュ。また、描かれた「THE BIG C」という文字は、新聞の見出し「ビッグC:がん治療に効く心構え」から取られものだそう。〈がん=Cancer〉と〈イエス・キリスト=Christ〉の「C」。恐怖と救いの両面を意味しているようで、とてもウォーホルらしい表現だと感じました。
齋藤飛鳥さん(乃木坂46)も登壇! 開幕前日に開会式などを実施。
開幕前日の9月16日(金)には、開会式やメディア内覧会、メディアセッションが実施されました。開会式には京都市長の門川大作氏、アメリカ・ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の館長パトリック・ムーア氏、本展覧会のキュレーターであるホセ・カルロス・ディアズ氏、そして展覧会オーディオガイドのナレーターをつとめる齋藤飛鳥さん(乃木坂46)が登壇。テープカットなどが行われました。
その後のメディアセッションには、パトリック・ムーア氏、ホセ・カルロス・ディアズ氏、齋藤飛鳥さんの3名が出席。パトリック・ムーア氏は「1956年に訪れた京都でウォーホルが日本を好きになったことを伝えるため、アンディ・ウォーホル美術館に所蔵されるアーカイブからじっくり調査しキュレーションした」と作品だけでなく旅程や記念の品々を展示した意味を教えてくれました。さらに、ホセ・カルロス・ディアズ氏からは「誰もがイメージするウォーホルの代表作はもちろん、あまり知られていないウォーホルの一面にも着目していただきたい。ポップ・アートのスターとなる前の1956年の世界旅行は知られざるアンディ・ウォーホルの側面だし、抽象表現に挑戦した大型作品の《カモフラージュ》や、《最後の晩餐》も一般的には広く知られていない作品。全体を通してウォーホルがもっている両面性をお楽しみいただけるとうれしい」と展示についての見どころを紹介。
展覧会のオーディオガイドでナレーターをつとめる齋藤飛鳥さんは「アンディ・ウォーホルのことはヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)のジャケットなど有名な作品は知っていましたが、どういった人生や功績を残した方かは詳しく知りませんでした。今回、ガイドの音声を録音する前にいろいろ教えていただき、新鮮な気持ちのままガイドを収録できたと思います」と、ナレーターをつとめたことについて語ってくれます。
また、京都の印象についても今回の展覧会でイメージが深まったそうで、「京都には、景観の美しさなど東京とは違う魅力があります。アンディ・ウォーホルの実際のスケッチを見て、さらに理解が深まった気がしますし、アンディ・ウォーホルの心にも響くような街だということは日本人としてはすごく誇らしいなと感じました。展覧会は2月までやっているのでプライベートでまた来られたらいいなと思います」と再びの来訪を願っていました。
「アンディ・ウォーホル・キョウト/ ANDY WARHOL KYOTO」
期間:2022年9月17日(土)〜2023年2月12日(日)
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(但し祝日の場合は開館)、12月28日〜1月2日
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
入場料(税込):
土日祝 一般2,200円/平日 一般2,000円/大学・高校生1,400円/中学・小学生800円
※20人以上の団体割引料金は当日料金から200円引き。
※障がい者手帳等をお持ちの方(要証明)と同伴される介護者1名は無料。
※未就学児は無料(要保護者同伴)。
※会場内混雑の際は、今後、日時予約をお願いする場合や入場までお待ちいただく場合がございます。