映画『デリシュ!』 フランス革命前夜の食革命。〈世界初のレストラン〉が誕生するまで。

©︎2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS

世界初の“レストラン”開業の秘密、教えます―――フランス革命前夜。貴族と庶民が同じ場所で食事をするなど考えられなかった時代に、誰もがおいしい食事を楽しめる“レストラン”をつくった料理人の物語を描いた映画『デリシュ!』。9月2日(金)から全国公開されます。

食欲の秋はもうすぐそこ。18世紀フランスの色とりどりの料理が彩る映画を、おいしく味わってみてはいかが。

 

昔は料理に創造性を求めなかった?

さまざまな料理が登場している現代では、クリエイティビティのある料理人がつくる革新的な料理は大いに歓迎されます。しかし、今から200年以上前の18世紀、美食の国であるフランスでさえ食に関して保守的。料理人は既存の料理の複製をひたすら求められていたそうです。

 

保守的な食文化を打ち破ろうとするのが、今作の主人公である料理人・マンスロンです。誇り高き宮廷料理人である彼は、主人である公爵主催の食事会で渾身の料理をふるまうべく奮闘します。ともに働く弟子たちに檄を飛ばしながら指定された豪華な宮廷料理を完成させていき、自身の手ではジャガイモを使った創作料理を生み出します。ジャガイモ、チーズ、トリュフを重ねて記事で包んだ新しい料理「デリシュ」は、見た目は地味ですが味わい深く、画面を通してみているこちらも「絶対においしい!」ことがわかります。

しかし、当時は食に革新性を求められていません。ジャガイモも高貴な人間が食べるものとは思われておらず、貴族たちはデリシュに憤慨。反感を買ったマンスロンは公爵から解雇され、息子とともに田舎の実家に戻るはめになります。

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マンスロンを演じるグレゴリー・ガドゥボワは料理の練習を重ねたそうで、腕の立つ料理人の手さばきを見事に再現しています。さらに、ふくよかな体躯と肉付きのいい手、無愛想な表情からは、人に対しては不器用ながらも〈心から料理を愛している〉ことが伝わり、そこから創造されていく料理たちは〈きっとおいしいだろうな〉と思わせてくれます。とくに田舎に帰ってからつくる素朴なパンがとてもおいしそうで、パン好きのわたしは「一切れ食べたい!」と本気で思いました。

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庶民も外でおいしい料理が食べられる“レストラン”誕生へ。

息子と実家に戻ったマンスロンは打ちひしがれ、料理をつくることを止めてしまいます。馬や人が休む宿場を経営してほそぼそと暮らしていますが、マンスロンに料理をつくっていたときの生気はあません。

ある日、ルイーズと名乗る女性が現れてマンスロンに弟子入りを懇願します。今でも料理人の世界は男性社会だといわれていますが、当時はさらに厳しい時代。当然、マンスロンも断ります。しかし、彼女は諦めずにぶつかっていき、マンスロンも次第に心を開いて料理の心得を伝授していくのです。

 

実はルイーズには秘密があり、単なる料理人志願の女性ではありません。こころから映画はマンスロンの物語とルイーズの物語が交差し、料理だけの話ではなくなります。封建的な18世紀ヨーロッパにおいての、男性と女性、貴族と庶民、富めるものと貧するもの…。時代の背景としてさまざまな問題が存在し、料理もそれらと切り離せない存在であることが描かれています。

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しかし、料理は誰もが楽しめるもの。階級や性別で区別されるものではないはずです。おいしい料理をつくること、食べさせることに喜びを見出すマンスロンは、ルイーズや息子の手を借りて世界ではじめて一般の人のためのレストランをオープンさせます。

宮殿で講釈を並べながら食べる貴族のためではなく、開放的な緑のなかで楽しく食べてくれる庶民のためにつくるあたたかい料理のおいしそうなこと。あんなレストランがあれば、ぜひとも行ってみたいものです。

 

ちなみに、公式サイトには、映画に登場する「デリシュ」のレシピが公開されています。トリュフやカモの脂など手に入れにくい食材を、きのこやラードで代替えすれば似たものがつくれるのでは? 料理が好きな方はチャレンジしてみてはいかがでしょう。

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映画『デリシュ!』

2022年9月2日(金)より、大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OSなどで公開。

公式サイト:https://delicieux.ayapro.ne.jp/

masami urayama

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