スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫さん。高畑勲・宮﨑駿という名監督とともに数々のアニメーションを世界に届けてきた鈴木さんが、何を見て、何を読んで、自身を確立してきたのかを紐解ける展覧会『鈴木敏夫とジブリ展』が京都文化博物館で開催されています。(〜6/19まで)
編集者・プロデューサーとしてクリエイターと向き合い、どのようにスタジオジブリの映画を生み出していったのか? その答えがここにあるようです。
足跡をたどっていくと、ジブリ誕生へと行き着く。
鈴木敏夫さんは今年で74歳。本展には、少年時代から現在まで約70年間、鈴木さんが読んで、見て、楽しんできたものが一同に展示されています。それらを見ていると、昭和・平成・令和という時代を駆けながら好奇心の赴くままに多様なカルチャーを楽しみ、ワクワクとドキドキをたっぷり吸収して〈鈴木敏夫〉という稀代の人物ができあがっていったことがわかります。
展示は6章で構成され、第1章では少年時代にこもって本や漫画を読みふけっていた四畳半の部屋を再現。鈴木少年がそこにいるような空気感が漂い、一気に1950年代にタイムスリップできます。
つづく第2章は大学時代。学生運動が盛んだった混乱期にふれたものを紹介しています。ここまでが学生時代に鈴木さんがインプットしてきたもの。それらバラエティーに富んだ作品ラインアップは、時代を表すカルチャー史としても大いに楽しめます。
第3章は徳間書店時代で、創刊から参加して編集長も努めた『アニメージュ』がどのようにしてヒット雑誌になったのか? などを紹介。斬新な考え方やアイデアをどんどんと取り入れて雑誌をおもしろくしていく、その過程を知ることができて個人的にはとても興味深かったです。
そして、宮﨑駿監督と高畑勲監督との出会い。第4章ではジブリ誕生の秘密が紹介されています。わたしはスタジオジブリのファンで作品を多く観てきましたが、ジブリがどのように生まれたのかなどのエピソードは知りませんでした。ジブリファンの方はぜひ会場で確認してみてください。
ジブリファンを楽しませる仕掛けもいっぱい!
「鈴木敏夫とジブリ展」という名称のとおり、本展にはスタジオジブリが世界に届けてきたアニメたちとのふれあいもあります。誕生秘話や宣伝・プロモーションの作り方など作品を多面的に見られる展示だけでなく、名シーンや名場面、人気キャラクターたちを使った仕掛けも盛りだくさん。
みんなが大好きなトトロのフォトスポット(平日限定)や、スタジオジブリ作品の名場面を背景に鈴木敏夫さんが書いた名セリフを吊っている展示があり、記念撮影をしたり、お気に入りのセリフを探したりできます。
また、第5章の一画には、湯婆婆と銭婆のおみくじが登場。それぞれ〈開運〉と〈恋愛〉が無料で占え、お悩みに対するありがたいアドバイスがもらえます。おみくじには鈴木さん書き下ろしの言葉があるので、展覧会のいいお土産になるのもうれしいところ。
鈴木さんの血肉となった8,800冊の書籍を展示した圧巻の本棚!
本展最後の展示となる第6章では鈴木さんの隠れ家「れんが屋」をモチーフにした書庫を再現しています。鈴木さんが読んできた、そして今なお読みつづけている書籍が8,800冊も並び、その姿は圧巻です。本好きの人はここに立つだけで幸せを感じるのではないでしょうか。
オープン前日の4月22日に行われた内覧会では、本棚の前に鈴木敏夫さんが来場。「子どものころから読んできた本を全部並べて、その真ん中に立ってみたいと思っていました。それが叶えられてうれしいです」と本展実現の喜びを語ります。また、今回の開催地・京都については「京都や奈良は日本最大のテーマパークだと思っています。街中に見るものがたくさんある京都で展覧会を開くのはドキドキですが、やるからには多くの人に見てもらいたい」と思いを伝えてくれました。
鈴木敏夫というひとりの人間の生き様のおもしろさ、その鈴木さんを通して見えてくるスタジオジブリの奥深さを感じる本展。新たな視点を得られたことで、ジブリ作品の楽しみ方がひとつ増えたように感じます。
「また、ジブリの作品が観たい!」そう思える展覧会です。
「鈴木敏夫とジブリ展」
期間:2022年4月23日(土)〜6月19日(日)
開館時間: 10:00〜18:00 ※金曜のみ19:30まで(入室はそれぞれ30分前まで)
休館日:月曜日、4月25日(月)、5月2日(月)
会場:京都文化博物館
入場料(税込):一般・大学生1,600円/中・高校生1,300円/小学生1,000円
※未就学児は無料(要保護者同伴)。
※未就学児、障がい者手帳などをお持ちの方と付き添いの方は1名まで無料(要証明)。
※学生料金で入場の際には学生証をご提示ください。
展覧会の詳細は公式サイトをご覧ください。