映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』 素顔を見せないSiaの頭の中がのぞける、新体感ポップ・ミュージック・ムービー。

©2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

素顔を見せない“顔なきポップスター”として世界的な注目を集めるシンガーソングライター・Sia(シーア)。楽曲はもちろん、MVなどのビジュアル制作でも卓越したセンスが光る彼女が映画製作に進出。原案・脚本・製作・監督を手掛けた映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』が到着しました。

Siaの頭のではこんな風に音楽が動いているのだろうな―――と思わせる映像は感覚的に楽しめるポップ・ワールド。目と耳をフル回転して、Siaの世界を体感してください。

 

ミュージックに救われる物語。

世界の歌姫と呼ばれるSia(シーア)は、ステージでは自分の顔をウィッグで覆い隠して素顔を見せずにパフォーマンスすることで有名。その理由はメンタルヘルスを保つためといわれています。大切な人を亡くしたことでアルコールや薬物に溺れ、さらにはうつ病も発症して自殺しようとするほど追い詰められていた彼女は、愛すべき友人と音楽によって救われたのだとか。

 

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』は、そんなSiaの実体験がベースとなっています。

 

Sia自身を投影した主人公・ズーは、アルコール依存症のリハビリテーションプログラムを受けつつ孤独に生きている女性。ある日、疎遠になっていた祖母が急死したと連絡が入り、長らく会っていなかった自閉症の妹・ミュージックと暮らすことになります。

妹のミュージックはズーとは違って無垢でかわいく、周囲の人に愛される存在。しかし、周囲の変化に敏感で対応できないとパニックを起こすため、ズーは途方に暮れてしまいます。

そんなときに現れるのがアパートの隣人・エボ。やさしく手を差し伸べる彼にズーは心を開き、3人での穏やかな日々に居心地のよさを覚えはじめます。そして、自分の孤独や弱さと向き合い、少しずつ変わろうとしていくのです……。

 

このように、自分も他人も信じられずに孤独に生きてきたズーは、自閉症の妹・ミュージックといっしょに生きることで救われ、自分の人生を取り戻していきます。

無垢な存在として描かれるミュージックは、音楽の擬人化でもあるのでしょう。物語の中でズーが音楽を聴いて救われるといったシーンはでてきませんが、彼女のそばには妹の姿をしたミュージックがいます。〈音楽によって人生が救われる〉というメッセージをSiaはこういうカタチで描くのかと、わたしはとても興味深く感じました。(あくまで個人的な視点です)

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頭の中のポップミュージックを具現化したカラフルな世界が楽しい♪

ズーの妹・ミュージックは、頭の中でいつも音楽を響かせ、色とりどりの世界で自由に遊んでいます。さらには、ズーやエボも自身の気持ちを音楽で表現。こう書くとミュージカル映画だと思われそうですが、本作のスタイルは少し違います。

 

物語を進行させるために歌を使用するミュージカルとは異なり、登場人物の頭の中で繰り広げられる音楽世界をリアルなストーリーに差し込む展開。ズーとミュージックの物語である本筋と、Siaの音楽を堪能できるミュージックパートの二重構造で楽しめるようになっています。

 

さらに、ミュージックパートは一曲一曲が自己完結型のMVのように構成されているので、そこだけ切り取っても見応えたっぷり。どこまでもカラフルでポップな世界は〈さすがシーア!〉と叫びたくなるセンスで、そこでミュージックの喜怒哀楽を全身で表現するマディ・シーグラー(代表曲「シャンデリア」のMVからSiaのミューズ)もさすがのパフォーマンスで魅せてくれます。ポップ・ミュージックを具現化したらこうなるのかな? とSiaの頭の中をのぞき見たような気分になってワクワクしました。

 

また、本作のためにSiaが12曲もの劇中歌を書き下ろしたことも話題。〈ミュージック、わたしはあなたの親友、いつもここにいる〉と唄われる「Music」をはじめ、愛と希望にあふれた歌詞やメロディからは、Siaがこの映画に込めたメッセージがストレートに響いています。

 

これら楽曲は、Sia以外にも主役のズーを演じるケイト・ハドソンやミュージック役のマディ・シーグラー、エボ役のレスリー・オドム・Jr.がボーカルをとって見事な歌声を披露。Siaが描く新感覚ミュージック・ムービーをしっかり体現しています。

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映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』

2022年2月25日(金)より、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条

3月4日(金)より、シネ・リーブル神戸などで公開。

公式サイト:https://www.flag-pictures.co.jp/lifewithmusic/

 

masami urayama

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