日本一の清流・島根県〈高津川〉流域で健気に生きる人々の暮らしと、そこに根づく伝統文化をシンプルかつ力強いメッセージで描いた映画『高津川』。
2月11日(金・祝)からの全国公開を記念し、梅田ブルク7にて舞台あいさつが開催されました。錦織良成監督をはじめ、映画初主演となる甲本雅裕さん、戸田菜穂さんが登壇し、公開延期から2年の時を経てようやく劇場に届けられた喜びを語ってくれました。
待って、待って、待って。やっと届けられた。
『高津川』は2020年4月に公開が予定されていた映画。登壇した3人は2年の延期を経てようやく公開できたことに喜びをかみしめます。錦織監督は「みんなで思いを込めて丁寧につくった映画。それをなんとかみなさんに届けたいと思って、待って、待って、待っていました。再びコロナウイルスの感染が拡大していますが、今日、観客のみなさんのお顔を見られてうれしいです」とあいさつ。主人公である斉藤学を演じた甲本さんは「この2年は長かった。でも、ぼくは今日公開できたことがベストだと思っている」ときっぱり言い切ります。また、大畑陽子役の戸田さんは2年を経て改めて映画の魅力を感じたそうで「本当の心の豊かさ、自分の幸せや大切なことは何かなどいろんなことに心を馳せられる。いつ観ても、心に響く映画です」と語ってくれました。
小さな映画だからこそ、細部にまでこだわった。
この舞台あいさつで甲本さんは『高津川』を「地味なタイトル」と評しましたが、本作は派手な大作ではありません。しかし、錦織監督はこういいます。「地味だからこそ、つくらないといけないという勝手な使命感があります。ヒーローはいませんが、みなさんの物語になるのではないかと。舞台は島根ですが、都会だ、田舎だという話ではなくどこででも起こることを描いています。(映画を観て)ちょっとだけ勇気をもってもらえたらと思っています」。
また、小さな作品だからこそ細部へのこだわりを強くし、デジタルではなくフィルムで撮影。衣装や食事などの消え物は地元の方の協力を得て本物を使用しています。高津川ロケでセットを使用せず、登場するお店もすべて実在するそう。「ぜひ、ロケ地巡りをしてください」と戸田さん。
もちろん撮影でもこだわり、背景に雲海が登場するシーンは3回も実施。「(最初の撮影時に)OKをもらって、よかったとホテルに戻ったら、ドアの下から紙が差し込まれて〈明日、4時〉と。それがつづきました(笑)」と甲本さん。錦織監督は「撮ったときは最高だと思ったのですが、地元の牧場主さんが〈監督、明日はもっといい雲海がでるよ〉って教えてくれるのですよ。それで3日間、撮影しました。不器用なやり方ですが、それをわかってくれるスタッフと俳優たちなので幸せでした」。
このエピソードからもわかるように、1ヶ月半、スタッフと俳優が寝食をともにした撮影現場の雰囲気はとてもよかったようで、戸田さんは「“終わりたくないなぁ”とみんなでいっていました。エキストラのみなさんもエネルギーがあって、最高の現場。それが映画にもでているのではないでしょうか」と、アットホームでありながら力強い空気が流れている本作の魅力をつくった要因を教えてくれます。
この映画が、誰かと話をするキッカケになってほしい。
舞台あいさつの最後にメッセージを求められると、錦織監督は「こういう映画を子どもたちに見せたいという思いがあります。イヤだといっても連れてきてもらえたら」とこの映画が幅広い世代に伝わることを願い、戸田さんは本日(2月11日)から順次、各地で公開されていくことに思いをめぐらせ「その土地々で(この映画が)心の灯火になってくれたらうれしいですね。日本のどこかで、この映画がかかっていると思ったら、自分でも幸せな気持ちになります」と言葉をつむいでくれます。
最後にあいさつをした甲本さんはコロナ禍で俳優は何ができるのか? を問うたといい「何も与えられないし、与えようとしてはいけないと思いました。でも、イヤなことでパンパンになっている頭と心に、(作品を通して)少しだけ隙間を空けることができるのではないかと。みなさんが映画やテレビ、舞台を観て隙間ができたら、楽しいことだけを詰めてあげてください」と熱く語ります。
さらに、「この映画を観て、おもしろかったという人も、つまらなかったという人もいると思います。それが、誰かと話すキッカケになってほしい。コロナ禍の今だからこそ、人と話をするのが大切だとぼくは思います。今日はありがとうございました」と締め、観客からの大きな拍手に包まれていました。
映画『高津川』
2021年2月11日(金)より、梅田ブルク7、京都シネマなどで公開。
公式サイト:https://takatsugawa-movie.jp/