この悪夢は、本物。――― 高い評価を得た『ゲット・アウト』や『アス』のプロデューサーがこの秋、届けるのは、新たな衝撃を呼び起こすパラドックス・スリラー。
11月5日(金)から全国ロードショーされる映画『アンテベラム』は、スリラーという枠を越えた驚きとメッセージが込められた問題作。ぜひ、事前情報を入れずに観てください!
まったく異なる境遇を生きるヴェロニカとエデン。
物語のはじまりは、ノスタルジックな美しい風景から。古き良きアメリカの姿を映しているのかと思いきや…そこは奴隷制度を信仰している南軍の旗が掲げられたアメリカ南部のプランテーション(大規模農園)。次第に白人たちに支配される黒人たちの過酷な状況が明るみになり、緊張感が高まっていきます。この、驚異的な長回しのオープニングショットは必見。集中して観察することをおすすめします。
中心となる登場人物・エデンは、このプランテーションに囚われの身となっている美しい黒人女性。白人の監視のもと過酷な労働を強いられ、自由に言葉を発することも許されていません。
前半のプランテーションのパートでは、傲岸不遜な白人たちと蔑み虐げられる黒人たちのいびつな関係性がしつように描かれ、観ているこちらも胸がつまります。
すると場面は一転。美しく洗練された黒人女性・ヴェロニカが登場します。心やさしい夫とかわいい娘とともに都会で暮らす彼女は、博士号をもつリベラルな社会学者。ベストセラー作家でもあり、お金、地位、幸せな家族、美しい容姿…すべてを兼ね備えているパーフェクトな女性に見えます。公私ともに順風満帆で、性別や人種から受ける差別を一刀両断にできる無敵感を携えているようです。
©2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
そんなヴェロニカは、講演会のためにひとりでニューオリンズへ。力強いスピーチで拍手喝采をあびた彼女は、気をよくしたままパワフルで陽気な親友たち(黒人と白人)と高級ディナーに繰り出して楽しい夜を過ごします。その後に恐ろしい罠が待ち受けているとも知らずに…。
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ある瞬間、観客は驚きの真実に気づく。
まったく違う世界で生きているはずのヴェロニカとエデン。その彼女たちが交わる瞬間、観客たちは驚きの真実に気づきます。
このつづきは、ぜひ映画館で確かめてください。
最初は小さな違和感から「あれ?」と疑問をもち、真実がわかったときはバラバラだったパズルが完成したときのように、「わたしたちが観ていたものはコレだったのか!」とモヤっていた景色がクリアになります。わたしは思わず、「えっ!そうなの!?」と声がでました。
斬新でオリジナリティあふれる脚本を書き上げ、スリリングに映像化したのは、本作が初の長編映画となるジェラルド・ブッシュ&クリストファー・レンツ。“ブッシュ+レンツ”として知られるふたりは、警察暴力に関する公共広告(PSA)や公立学校制度の人種差別復活を取材したドキュメンタリーを制作した新世代の映像作家なのだそう。この経歴を知ると、スリラーという娯楽映画のなかに硬派なメッセージが貫かれている今作の姿勢に納得できました。
ラストシーン。ジャネール・モネイの表情はとても印象的で、美しく・たくましい女性の姿に胸がすきます。しかし、それと同時に、今も昔も変わらない状況が少なからずあることにわたしは心底ゾッとするのです。
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映画『アンテベラム』
2021年11月5日(金)より、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、神戸国際松竹などにて公開。
公式サイト:https://antebellum-movie.jp/index.html