19世紀末から20世紀初頭に活躍したうランスの彫刻家フランソワ・ポンポン。生態をとことん観察したうえで単純化した、数々の動物彫刻はシンプルでありながら躍動的。ポンポンの手から宿った命が輝いています。
京都市京セラ美術館では、日本初の回顧展「フランソワ・ポンポン展 〜動物を愛した彫刻家〜」を開催中(〜9/5まで)。ポンポン作品の魅力を存分に味わえる約90点を展示しています。
シンプルな曲線に力強さと愛らしさが宿る。
展示されている約90点のほとんどが動物彫刻。代表作のシロクマをはじめ、鳥、犬、ライオン、鹿、豚、キリン…、動物園さながらに多様な動物たちが並んでいます。その姿はどれも、単純化されたもの。毛や羽など表面の凹凸を省略し、優美だけれどもシンプルな曲線で動物たちを表現しています。そのため、ポンポンの作品は「影のない彫刻」だともいわれています。
しかし、だからといって無機質になっているわけではないのです。極限までデフォルメされたシルエットは動物の特徴を際立たせ、今にも動きだしそうな躍動感にあふれています。動かない彫刻に“動き”を与えることで、生きているような動物彫刻を完成させているのです。
それができるのも、ポンポンが動物たちを愛しているからなのではないでしょうか。自らが飼っていた猫や鳩、別荘があったノルマンディー地方の家畜、通い詰めた動物園の珍しい動物たち…。ポンポンはそれら動物たちの“生きた姿”を徹底的に観察し、目にしているその場で大まかなカタチを粘土でつくってからアトリエに入ったそう。
ポンポンはいいます「動物たちは素晴らしくポーズを決めてくれる。人間たちよりもずっと上手にね」。動物を愛し、きっと動物たちからも愛されたであろうポンポン。だからこそ、彼の作品には力強さと愛らしさが宿っているのだと感じました。
シロクマ! シロクマ! シロクマ!
フランソワ・ポンポンの代表作といえば《シロクマ》。1922年の展覧会サロン・ドートンヌで大きさ2.5メートルの石膏シロクマを出品し、この作品が高く評価されたことでポンポンの名前は広く知れ渡りました。
本展には、シロクマ以外にもたくさんの動物彫刻が展示され、“シロクマだけじゃない” ポンポンの魅力が詰まっているのですが、でも、やっぱり、彼の手から生まれたシロクマには唯一無二の魅力があります。
今回の回顧展では、卓上サイズのシロクマ作品3点をラインアップ。それぞれを見比べてみると、足の位置や太さ、首の傾きなどが微妙に違い、ポンポンが数年かけて理想のシロクマのカタチを追求していったことがわかります。
さらに《ヒグマ》作品も、わたしのお気に入り。地面に鼻を近づけて餌を探しているようなポーズはなめらかで美しく、とってもキュート。観る人を笑顔にします。
最後にわたし個人としておすすめしたいのが、ポンポンの生涯を記した年表。1992年、67歳でようやく彫刻家として認められるまでの芸術活動は苦難が多く、行動も人間的。国に作品の買い上げを何度も請願するも却下されているところを見ると、ポンポンの作品がさらに愛おしく感じるのです。
「フランソワ・ポンポン展 〜動物を愛した彫刻家〜」
期間:2021年7月10日(土)〜9月5日(日)
開館時間:10:00〜18:00(展示室への入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
会場:京都市京セラ美術館
展覧会の詳細は公式サイトをご覧ください。
公式サイト:https://pompon.jp/