映画『街の上で』今泉力哉監督 舞台あいさつ。自分の住んでいる街の物語だと思ってもらえたら。

文化の街・下北沢を舞台に、そこで暮らす人々のたわいもない、でもとても愛おしい日々を紡いだ映画『街の上で』。4月9日(金)より全国で公開され、関西でもテアトル梅田や京都・出町座などで上映中です。

4月10日(土)には公開を記念した舞台あいさつをテアトル梅田で開催。今泉力哉監督が弾丸で来阪し、一年間の待機期間を経てようやく全国の映画ファンに本作を届けられた喜びを語ってくれました。

 

若葉竜也さんは、恋愛がうまくいかない役にハマると思った。

実は約一年前に公開予定だった本作。冒頭で今泉監督は「ほぼ一年延びましたが無事に公開できました。こうやって満席のお客さんの前で上映できたことをすごくうれしく思います」とあいさつ。会場に詰めかけたファンの大きな拍手に包まれました。

 

その後の質疑応答は、主演の若葉竜也さんについての質問からスタート。今泉監督は「この映画は小さな作品なので、これからの俳優たちでつくろうと考えていました。若葉さんなら若い俳優たちとなじめるし、中心にいてくれる」と起用の理由を教えてくれます。また、若葉さん演じる荒川青は女性たちに翻弄される青年。若葉さんは映画『愛がなんだ』でも女性に振り回される役を印象的に演じており、今泉監督は「若葉さんには失礼なのですが、恋愛がうまくいかない役をやらせたらハマると思った(笑)」と打ち明け、「(青という役は)ひたすら受けの芝居で、よくわからない人たちに絡まれて困るということが繰り返される。それができる若葉さんでよかった」とやさしくも少し頼りない荒川青という人物を魅力的に体現した若葉さんへの厚い信頼も語ってくれました。

 

自分の住んでいる街の物語だと思えてもらえたらいい。

本作は下北沢を舞台にオールロケで撮影されているのも大きな特徴で、「下北沢で住んでいる人が見ている景色にしたくて、ぼく自身が行きつけの飲み屋や行ったことのあるライブハウスで撮っています」と今泉監督。とはいえ、映画のなかで繰り広げられているのは、どこにでもある日々の話。今泉監督も「下北沢で撮っていますが、ほかの場所でも起きそうなことばかり。自分の住んでいる街の、そのへんの路地で起こっている物語だと思ってもらえたらいい」と述べます。

 

また、関西ならどこの街を舞台にしたいかを問われると、以前、大阪に一年間ほど住んでいたことを明かし、「新今宮に住んでいたので、新今宮からなんば辺りを撮りたいかな。なんばから本町までをただ歩いているだけという、とても短いロードムービーでもいいかも」と考えをめぐらせてくれました。

 

この映画は、まずミニシアターで公開したかった。

今回、舞台あいさつを行ったテアトル梅田は、関西でもっとも古いミニシアター。今泉監督自身もミニシアターには深い思い入れがあることから「この映画はまずミニシアターで公開したかった」といい、現在のコロナ禍で厳しい状況におかれているミニシアターの状況もおもんばかります。「ミニシアターはこれからの監督や俳優、若い観客たちが映画を通して出会い、つながる場所。それがなくなると、そこで生まれるはずだった出会いを失い、生まれなかった時間をつくってしまう。ミニシアターで生まれる時間はとても大切だと思っているので、いつまでもありつづけてほしい」と気持ちをこめて語りました。

 

舞台あいさつの最後には「映画を見終わって持ち帰る気持ちがバラバラなのは豊かなことだと思っているので、観る人がそれぞれの物語を立ち上げてくれればいい」という今泉監督らしい言葉で映画への思いを表現。「川瀬雪役の穂志もえかさんは、“二回目を観たら好きなシーンが変わった”といっていました。繰り返し観ることで見え方が違ってくることもあるので、何回も観てほしい」とメッセージを送りました。

 

映画『街の上で』

2021年4月9日(金)より、テアトル梅田、イオンシネマ シアタス心斎橋、京都・出町座

2021年5月1日(土)より、元町映画館にて公開。

公式サイト:https://machinouede.com/

masami urayama

関連記事