MIOびわこ滋賀
高木 和道 選手
今年の初め、家庭の都合から急遽タイのチームとの契約を解除し、帰国することにした。新天地となったのは、地元・滋賀県。JFLで戦うMIOびわこ滋賀のメンバーとして、初めてのアマチュアリーグに挑む。
初めてのアマチュアリーグで感じた難しさとひたむきさ。
MIOびわこ滋賀に加入することになった経緯をお聞かせください。
家庭の都合があって、急遽タイのチームとの契約を解除して帰国することになりました。フロントスタッフの内林(広高氏)は高校の後輩で、以前から「いつか滋賀に戻ってプレーしてほしい」と言ってくれていたので、僕を獲ってほしいと自分から連絡しました。
加入してから、シーズンの半分が過ぎました。初めてのアマチュアリーグですが、何か感じていることはありますか?
アマチュアなので、選手たちは生活していくために仕事もしなければいけません。サッカーと仕事の両立の中でコンディションを整えるのは、すごく難しいところだと思います。スケジュールもハードになりますし。でも、明らかに仕事で疲れている様子だったとしても、練習場に来たらみんな笑顔でサッカーしているんです。この環境でサッカーを続けていくのは、簡単なことではないです。本当にサッカーが好きなんですよ。みんなのひたむきさを日々感じています。
ファーストステージは5勝4分6敗で、勝点19の10位で終えています。引き分けのゲームを勝ち切ることができれば、まだ順位を上げていけそうですね。
アウェイでの戦績が、3分3敗でした。去年もアウェイでの勝率が悪かったようなので、長距離のバス移動がコンディションに影響しているのかもしれないなと感じています。もちろん僕たちの実力不足もあるとは思います、ホームでの勝ち試合でもかなりきわどいものもありますから。セカンドステージはアウェイでの試合の方が多いですし、気を引き締めていかないといけないですね。実力の差を感じるチームもありますし。
具体的には、どのチームでしょう?
Honda FCとFC大阪ですね。ボールポゼッションをするときにうまくパスコースを作っていて、連動性や流動性もあるし、余裕もある。1人1人の能力を見ても、実力がちょっと上かなと感じました。うちの選手はもちろん、他のチームの選手もがんばっているんですよ。でも、サッカーは、がんばって走ればいいだけではないですから。良い結果を得るためには、何のために走るとか、どこにどうやって走るとか、いろいろ考えてプレーできないといけないですよね。
急なタイミングでも、滋賀に来られて良かった。
地元に戻られてから、サッカーの指導もされていると伺いました。
週に2〜3回、外部コーチとして母校の草津東高校に指導に行っています。僕が在校していた頃と比べて環境が良くなっていて、うらやましいぐらいです。土のグラウンドは人工芝になっていますし、僕以外にも外部コーチの方が何人かいて指導体制も良いですし。
指導者になりたいという考えもあったのでしょうか?
まだそこまで考えてはいないですが、指導に行くようになって、指導者というのもおもしろそうだなと興味を持つようにはなりました。普段は話したり僕のプレーを見せたりしながら指導しているんですが、選手たち自身で考えるような場面を作ったときがおもしろいんです。選手たちが考え抜いた後に新しいことができるようになり、僕を驚かせてくれます。成長する姿を見られるのはうれしいですね。
試合を観に行かれることもありますか?
僕自身のJFLの試合があるので、彼らの試合を観に行ったことはまだないです。でも、良い試合ができるよう、1人1人の選手を伸ばしてあげたいですね。できることを増やして、上手になってもらいたいです。
地元クラブでプレーするだけでなく母校でも指導し、地元のサッカーに様々なかたちで関われているんですね。
タイミングは急でしたけど、僕は滋賀に来られて良かったと思っています。僕もサッカーが好きでこれまで続けてきました。目の前の相手に負けたくないし、そのための自己管理もしっかりやる。そういう気持ちを持ち続けられている限り、現役でプレーしていきたいと思っています。
スポーツで盛り上がる滋賀県に。魅力をさらに増やしていきたい。
プロサッカー選手になって以降、初めて滋賀に戻って来られました。外に出たからこそ感じることはありますか?
もっとスポーツで盛り上がってほしいなと感じています。バスケットボールのBリーグで戦う滋賀レイクスターズもありますし、JFLで戦うMIOもあるので、まだスポーツで盛り上がっていけると思うんです。僕たちのホームスタジアムをもっとにぎやかなものにしていきたいですね。
どんなスタジアムをイメージされていますか?
たとえば、スタジアムグルメのお店がいっぱい出たら、それを目当てに来てくれる方も増えるかもしれないですよね。サッカーを好きな大人の方だけが観に来るだけではなく、家族連れにも訪れてもらえるスタジアムであってほしい。もちろん良い試合を見せられるといいですが、思うようにいかない試合もあると思います。それでも行く価値があるスタジアム、見たいチームになっていかなければいけない。ひたむきなのは他のチームもきっと同じでしょうから、MIOらしい魅力をこれからさらに増やしていきたいですね。
昨年末には「Jクラブ設立特命委員会」が発足し、MIOびわこ滋賀をJクラブにしていこうという機運も高まっています。
Jリーグに行ける可能性があるということは、チームのモチベーションに繋がるだけでなく、地域活性化のチャンスにもなると思っています。まずはJFLで戦うMIOというチームがあることをよりたくさんの方に知ってもらわなければいけないですが、その足掛かりとして、今シーズンをクラブ史上最高順位で終えられるよう戦っていきます。
高木 和道 選手
1980年11月21日生まれ、滋賀県野洲市出身。元日本代表。2000年6月に大学を中退し、清水エスパルスでプロ入り。以降、ガンバ大阪やヴィッセル神戸などで活躍。2017年はタイリーグ2部のエアフォース・セントラルFCで、1部昇格に貢献した。
Text by Kaori MAEDA