全国社会人サッカー選手権大会2014
ナンバー1の栄冠と昇格へのチャンスを目指せ!

all_pics_01

 

「日本一過酷」と言われる大会が、和歌山県の6つの会場で開催された。全国の予選を勝ち抜いてきた32チームが、5日間連続で40分ハーフの試合を勝ち抜いていくノックアウトステージだ。まさに過酷な戦いの先には、ナンバー1の栄冠とJFL昇格を決める「地決」への出場権が待っている。2009年にこの大会を制した松本山雅FCは、JFL、そしてJリーグ昇格を果たした。

9月27日~10月1日、期間中を晴天に恵まれて記念すべき第50回大会は開催された。関西での開催は2005年の兵庫県以来だ。one制作チームでは、関西から出場した6チームを中心に大会の行方を追った。

 

<参加チーム>

北海道:札幌蹴球団、新日鐵住金室蘭、トヨタ自動車北海道
東北:ラインメール青森FC、コバルトーレ女川
関東:FC KOREA、クラブ・ドラゴンズ、VONDS市原FC、東京23FC、さいたまSC、日立ビルシステム
北信越:JAPANサッカーカレッジ、サウルコス福井
東海:Chukyo univ. FC、FC鈴鹿ランポーレ、矢崎バレンテ、FC刈谷
関西:FC大阪、奈良クラブ、バンディオンセ加古川、レイジェンド滋賀FC、アミティエSC
中国:松江シティFC、デッツォーラ島根、三菱水島FC
四国:アイゴッソ高知、高知UトラスターFC
九州:三宅クラブ、MD長崎、鹿児島ユナイテッドFCセカンド、三菱重工長崎SC

開催地:アルテリーヴォ和歌山

 

<会場>

橋本市運動公園多目的グラウンド、紀の川市桃源郷運動公園陸上競技場、上富田スポーツセンター球技場・多目的グラウンド、串本町サン・ナンタンランド多目的グラウンド、新宮市やたがらすサッカー場

 

 

開会式:だから「ゼンシャ」は、サッカー好きを魅了する。

 

all_pics_02

 

全国を代表する32チームが一堂に会する。

9月も終わろうというのに、汗ばむほどの陽気だった。

1回戦前日となる9月26日(金)の午後、和歌山県南部に位置する上富田町の上富田文化会館で、全国社会人サッカー選手権大会の開会式が行われた。

美しい田園風景が広がる穏やかな町に、開催地となる和歌山県の6市町の長をはじめ、全日本サッカー連盟や日本サッカー協会、和歌山県サッカー協会の関係者、そして、参加32チームの選手たちが全国から続々と集まって来る。ユニフォーム姿でホールに入る選手たちの表情はさまざまだ。檀上には審判委員長の上川徹氏や主任インストラクターの岡田正義氏の姿もある。場内にたちこめるのは、明日からの戦いを前にした人々から発せられる独特の空気感。いよいよ、「全社」が始まる。

 

過酷なレギュレーションで、試される「チーム力」。

全国社会人サッカー選手権大会、通称「全社」。日本サッカー協会および全国社会人サッカー連盟の社会人登録チーム約5,000チームの頂点を目指し、全国9地域の予選を勝ち上がってきた31チームと開催地1チームの32チームが一発勝負のトーナメントを戦う。

この大会は翌年開催される国体のリハーサル大会とも位置付けられており、今年は、第70回国民体育大会紀の国和歌山大会サッカー競技リハーサル大会として、和歌山の6市町の6つの競技場で1回戦から決勝まで32試合が開催された。

40分ハーフの試合が5日間連続で行われる過酷なレギュレーションを勝ち上がっていくためには、選手層やサポートの厚さも含めた真の意味での「チーム力」が必要だ。まさにナンバー1決定戦。それに「全社優勝」という栄誉は、クラブにとってはスポンサー獲得や地元自治体の支援を取り付ける大きな武器になる。

 

地決出場を左右する「権利持ち」チームの存在。

この大会をさらに過酷なものにしているのが、「全社枠」の存在だ。JFL昇格を決める全国地域サッカーリーグ決勝大会(通称「地決」)への出場枠のことである。地決に出場できるのは全国9つの地域リーグ優勝チームと、全社ベスト4のうち「地決出場権を持たない」上位3チームとなっている。つまり、リーグ戦を2位以下でフィニッシュした「地決出場権を持たない」チームにとって、全社は地決出場へのラストチャンスとなる。絶対に譲れない戦いなのだ。

なお、全社ベスト4の中に地域リーグ優勝を決めている「権利持ち」のチームが1つでも入っていれば、自動的に4位のチームにも出場権が与えられることになる。今年の参加チームのうち、権利持ちのチームは5チームだ。北信越リーグ「サウルコス福井」、東海リーグ「FC鈴鹿ランポーレ」、関西リーグ「奈良クラブ」、中国リーグ「松江シティFC」、四国リーグ「高知UトラスターFC」。全社枠を占ううえで、この5チームの戦いぶりにも注目が集まる。

 

奈良クラブ、関西リーグ優勝チームの素顔。

all_pics_03

開会式は、出場チームの紹介から始まった。チーム名を呼ばれた選手たちが起立して一礼する簡単なものだが、奈良クラブだけは大仏を模したパフォーマンスを披露して会場の笑いを誘った。その中心には「岡山劇場」で知られる元Jリーガーの岡山一成選手がいる。全社出場がかなわなかった昨シーズンの終わりに奈良クラブにやって来た「昇格請負人」だ。今年の天皇杯で古巣ベガルタ仙台相手に劇的なゴールを決めて注目された。岡山選手の活躍をはじめ積極的なチームづくりもあり、今シーズンは関西リーグ優勝で地決出場を決めている。

この奈良クラブの全社での戦いぶりが、この後、大会の行方を大きく左右することになる。

 

50回大会は、サッカーゆかりの和歌山で。

大会役員のスピーチでは、開催地和歌山のサッカーとの関わりも紹介された。熊野三山の霊鳥・八咫烏が神武天皇を大和へ導いた故事は、日本サッカー協会のシンボルの由来と言われている。その熊野三山の一である熊野那智大社がある那智勝浦町は、日本近代サッカーの始祖といわれる中村覚之助の出身地だ。また近年では平成23年の紀伊半島大水害の復興のために、なでしこJAPANがここ上富田町で合宿して子どもたちへのサッカー教室を開催したエピソードもある。サッカーと縁の深い和歌山で、記念すべき第50回大会は開催される。地元和歌山の人たちの惜しみない協力が、大会を支え盛り上げてくれた。

 

アルテリーヴォ和歌山、宣誓に込めた想い。

開会式を締めくくるのは、その和歌山代表として出場するアルテリーヴォ和歌山のキャプテン・阿部巧也選手の選手宣誓だ。

all_pics_04

宣誓、我々選手一同は、スポーツマンシップに則り、全国各地から集まったサッカーを愛するこの仲間と、全国社会人の頂点を目指して、応援してくださる方々やサポートしてくださる方々への感謝の気持ちを忘れず、最後のホイッスルが鳴るまで正々堂々戦うことを誓います。

 

「和歌山からJリーグチームをつくる会」を立ち上げた児玉GMらが中心となってアルテリーヴォ和歌山は誕生した。まったくのゼロから始まったチームは、スタッフの情熱や地元の応援に支えられて強くなる。熱いファン・サポーターも増え、今シーズンは元日本代表の永井雄一郎選手の加入も話題になった。リーグ戦では一時期順位を下げ関西リーグでの全社出場権は逃したが、最終的には奈良クラブ、FC大阪に次ぐ3位でフィニッシュ、チームのエース大西選手はリーグ得点王に輝いた。

キャプテンの阿部選手は、そんなチームの精神的支柱でもある。開会式の後、宣誓に込めた気持ちと大会への想いを聞かせていただいた。

all_pics_05

「これまでいろいろな人の支えがあって、今、自分たちはサッカーができている。そのことを伝えたいと思い、選手宣誓に臨みました。今シーズンはリーグ3位、地決に出るには全社枠を取るしかありません。いちばん上を目指して、死にもの狂いで、それこそ最後のホイッスルが鳴るまで諦めずに全力で戦っていきます。地元開催ということもあります。応援してくれるファン・サポーターや運営してくれる方々とも一緒に力を合わせて、一試合一試合戦っていきたいと思っています。頑張ります。勝ちます」

キャプテンの言葉どおり、アルテリーヴォ和歌山は大会で素晴らしい戦いぶりを披露してくれる。

Text by  Michio KII  & Kaori MAEDA

onewebkansai

関連記事