印象派を代表する画家のひとり、クロード・モネ。多様で多彩な〈睡蓮〉の作品群で知られ、自然が創造する美しさとそこにさす光をとらえた風景画は、世界中の人々を魅了しつづけています。
そのモネの晩年の作品に焦点をあてた展覧会「モネ 睡蓮のとき Le dernier Monet : Paysages d’eau」が、京都市京セラ美術館で開催されています(〜6/8まで)。
パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開となる重要作品7点を含む50点が来日。日本各地に所蔵されている作品も加わり、“モネ晩年の芸術”が京都に集結しています。
ここから睡蓮がはじまった? 最初期と推定される〈睡蓮〉を展示。
昨年・2024年はパリで開かれた第一回印象派展から150年となる記念の年でした。マルモッタン・モネ美術館ではこれを祝う催しが行われ、日本では本展が2024年10月から2025年2月まで東京・国立西洋美術館で開催。来場者数80万人を記録した、大盛況の展覧会になりました。
その「モネ 睡蓮のとき」がいよいよ関西に登場。京都市京セラ美術館で3月7日(金)から展示がはじまっています。
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モネといえば、本展覧会のタイトルにも使われている〈睡蓮〉をイメージする人は多いのではないでしょうか。(実際、わたしもそうです)。その睡蓮は晩年の作品群です。
モネの晩年は、最愛の家族の死や自身の眼の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でもありました。そのような中で彼の最たる創造の源となったのが、1883年に居を構え、終の棲家となったジヴェルニーの自邸。モネはその庭に木々や花々を植え、池をつくり、橋を架けました。
独自の視点で庭の風景をカンバヴァスに描きはじめた彼は、やがて池に浮かんだ〈睡蓮〉をテーマにします。モネがはじめて睡蓮を描いたのは、1897年。池の眺めを最初に描いた1895年から2年の月日が流れていました。
本展では最初期の〈睡蓮〉と推定される作品を展示。後年の連作とは異なり、夕暮れの光の効果よりも、睡蓮の花そのものに焦点が当てられているのが興味深いです。
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こんな一面もあったのか! 睡蓮じゃないモネとの出会い。
ジヴェルニーで暮らすモネは、睡蓮の池に周囲の木々や空、光が一体と映し出される〈水面〉に魅せられ「水と反映の風景に取りつかれてしまいました。老いた身には荷が重すぎますが、どうにか感じたままを描きたいと思っています」という言葉を残しています。その言葉のどおりに創作をつづけ、1909年には「睡蓮:水の風景連作」を発表。そのなかの作品も会場を彩っています。
また、モネは、この主題を描いた巨大なカンヴァスによって部屋の壁面を覆いつくす“大装飾画”の構想を最期のときにいたるまで抱きつづけていました。この試行錯誤の過程で生み出された、2mにもおよぶ大画面の〈睡蓮〉の数々は本展の中心となっています。
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展覧会「モネ 睡蓮のとき Le dernier Monet : Paysages d’eau」の様子
また、展覧会の後半には、ずっしりとした空気をまとった重々しい作品が並んでいます。モネは晩年に白内障を患い、ものの見え方が変わったといわれています。画家にとって、目の病気は絶望的なことです。しかし、モネは創作の手を止めることなく、そのときに見て・感じたジヴェルニーの庭を荒々しい筆遣いと激しい色で描いていきます。
最晩年の作品たちからは、水面や光を繊細なタッチとやさしい色彩で表現していた、これまで作品群とはあまりに異なる印象を受けます。最初は驚きますが、じっくり対峙していくと、塗り重ねられた絵の具のなかに鮮やかな色彩と光を感じ、重厚でありながら澄みきった清らかさが伝わってくるのです。
私のように、“モネといえば睡蓮”というイメージをもってしまっている人にとって、この展覧会は「こんなモネもあったのか!」といううれしい出会いを与えてくれる場所。そして、変容する芸術のおもしろさも教えてくれるのです。
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作品をとおして、モネが愛した庭をゆっくり堪能して。
開幕の前日2025年3月6日(木)には開会式が行われ、マルモッタン・モネ美術館のコレクション部長 シルヴィ・カルリエ氏、京都市京セラ美術館の青木淳・館長をはじめ主催者が登壇し、本展の魅力を語りました。
京都市京セラ美術館館長 青木 淳 氏
今回はリニューアル後の北館・南館を使用した大規模なモネの展覧会です。今回はとくにモネが晩年に描いた〈睡蓮〉のシリーズを中心に紹介しています。それらの作品では、睡蓮だけではなく、水と空気の境目である水面が描かれ、それは虚像と実像がとけあう世界といえると思います。みなさま、モネの絵がもっている力を感じ、その世界観を体感していただければ幸いです。
主催者代表 読売テレビ 代表取締役社長 松田 陽三 氏
日本文化を愛したモネと、モネを愛する日本のみなさまにとって究極の展覧会となっています。京都市京セラ美術館にも美しい日本庭園がございますが、モネもジヴェルニーで自ら丹精込めて庭を造りました。見るものを没入体験へと誘う本展は、映像ではなくモネの絵の中に没入できるかつてない内容となっております。からだ全体でモネを感じていただければうれしいです。
監修者 マルモッタン・モネ美術館 コレクション部長 シルヴィ・カルリエ 氏
東京での開催も大変多くの方にご来場いただきました。今回、マルモッタン・モネ美術館所蔵、モネ晩年の作品と日本の美術館所蔵の作品を紹介しています。とくに、モネがジヴェルニーの終の棲家で描いた睡蓮や柳など100点あまりのコレクションの中からおよそ50点をここで紹介します。作品をとおして、モネが愛した庭をゆっくりご堪能ください。
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「モネ 睡蓮のとき Le dernier Monet : Paysages d’eau」
期間:2025年3月7日(金)〜6月8日(日)
会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階・南回廊1階
開館時間: 10:00〜18:00 ※入場は17:30まで
休館日:月曜日 ※4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館
観覧料:一般2,300円/大高生1,700円/中小生1,000円
※料金は全て税込。
※未就学児は無料。
※障がい者手帳等をご提示の方は本人及び介護者1名無料
※学生料金でご入場の方は学生証をご提示ください。
■本展は予約優先制です。美術館サイトよりご予約可能です。
https://art-ap.passes.jp/user/e/monet2025-reserve
展覧会の詳細は公式サイトをご覧ください。