映画『春に散る』大阪舞台挨拶 鑑賞後に大きなお土産をもって帰れる映画。

ノンフィクション作家・小説家の沢木耕太郎さんの人気小説を、映画『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久監督が実写化。元ボクサーと再起をかけるボクサーがタッグを組み、命をかけて世界チャンピオンを目指す、映画『春に散る』が8月25日(金)から全国公開されます。

公開を前にした8月8日(火)、大阪・TOHOシネマズなんばで舞台挨拶を実施。主演の佐藤浩市さん、横浜流星さんが登壇し、魂を込めて創り上げた自信作を大阪の観客にアピールしました。

 

瀬々監督は、とにかく熱かった。

大阪初披露となるこの日、作品を心待ちにしているファンの前に佐藤浩市さんと横浜流星さんが颯爽と現れます。まずは、アメリカから40年ぶりに故郷へ帰ってきた元ボクサー・広岡仁一役の佐藤さんが「今日は(映画から)たくさんのお土産をもって帰ってください」とあいさつ。再起を目指す・ボクサー黒木翔吾を演じる横浜さんも来場の感謝を伝えます。

 

最初のトークテーマとなったのは、メガホンをとった瀬々敬久監督について。瀬々組の常連で何度も作品に出演している佐藤さんは「あんまり仲良くないんですけどね」といいながら、4時間38分もある2010年の映画『ヘブンズ ストーリー』から「何本でたかなぁ」と笑います。

瀬々監督と初タッグを組んだ横浜さんは、最初のオファー時に「これにすべてが込められているから」と監督からマンガ(松本大洋さんのボクシング漫画『ZERO(ゼロ)』)を渡されたそうで、「とにかく熱かった。ボクシングの練習にもけっこうな頻度で来ていただいた」と情熱的な監督だと評します。監督をよく知る佐藤さんは「熱いというか、ムダに声がデカいんですよ。ピンク映画を撮っていた監督で、ピンク映画の撮影はオールアフレコだから芝居を見ながら演技指導したりする。〈もっと! もっと!〉と熱くなるから、そのときのクセが残って声がデカいんじゃないかな」と瀬々監督のキャラクターを明かしてくれます。

映画『春に散る』大阪舞台挨拶での横浜流星さん

 

プロライセンスの取得は、流星の〈ケジメのつけ方〉。

この映画をきっかけに横浜さんはボクシングのプロテストに挑み、みごと合格。C級のプロライセンスを取得します。MCの森川さんから合格を祝福されると、会場からも大きな拍手があがります。「プロテストは撮影後に受けたので、撮影が終わってもずっと練習を重ねていました。(プロテストを受けたのは)格闘家に失礼がないよう敬意を表したかったから。あと、この作品にかける想いも証明したかった。ボクシングはプロライセンスというカタチで証明できるので」と横浜さん。小さなころから空手に親しみ、格闘技をリスペクトする横浜さんらしい姿勢がうかがえます。

そんな横浜さんの背中を押したという佐藤さん。「今作にはボクシング指導の松浦(慎一郎)くんや世界戦を裁くレフリーなどが出演されている。そういう方々を前にした流星の本気を見ていたので、〈(プロテストを)やってみたら〉といいました。ただ、普通であれば映画を撮る前に受けるのに、彼は撮影後に挑戦して取った。これが流星の〈ケジメのつけ方〉なんだなとぼくは思いました」と語り、横浜さんの真摯な向き合い方を讃えます。

佐藤さんは、横浜さん演じるボクサー・黒木を指導する広岡役。ミット打ちのシーンでは、トレーニングを積んだ横浜さんのパンチを受けています。「野球のブルペンでキャッチャーがピッチャーの投げる球をいい音で捕るように、ミット打ちでもいい音をさせて受けなきゃいけない。いいぞ! いいぞ!って、パンチを繰り出す相手の気持ちを盛り上げるんです。でも、(横浜さんの)パンチは強いし重いから、肩やヒジに衝撃がきます。ゴルフができなくなったらプロデューサーを訴えてやろうと思っていました」とクレームを口にし、「なんとか大丈夫でしたけどね」とニコリ。

パンチを出す側であった横浜さんは「パンチを受ける痛みを知っているので最初は躊躇した」そうで、その躊躇を佐藤さんがかき消してくれたといい「浩市さんが〈本気でこい〉っていってくれたので、思いっきりいかせてもらいました」と大先輩に本気でぶつかれた充実感を表します。

映画『春に散る』大阪舞台挨拶での佐藤浩市さん

 

幸せな環境のなか、翔吾として生きられた。

佐藤さんと横浜さんの言葉は、本作がとても充実した環境で制作されたことを物語っています。その撮影を横浜さんは「幸せな環境のなか、翔吾として生きられた」と断言。「もっと撮りたかったし、もっとみなさんといっしょにいたかった。でも、その儚さがいいのかな…」と映画づくりの魅力をぽろり。また、長年撮影に関わってきた佐藤さんは、映画には独自の進行があり、それによって良い作品が生まれることもあるのだと教えてくれます。「映画の撮影スケジュールは、いろいろ考えて組まれています。それこそラストシーンからクランクインすることもあって、そんなところから入るの? という作品もある。だけど、できあがりを見たら、それがよかったとなったりもする」。

 

ちなみに、映画『春に散る』で佐藤さんのクランクインは、広岡の姪である佳菜子を演じる橋本環奈さんとのシーン。今作で橋本さんは彼女のパブリックイメージとは少し異なった役柄を演じているそうで、「(佳菜子は)多くが語られない役。いままでの彼女とは違った雰囲気のなかで人生を語っているように感じた」と佐藤さん。横浜さんは撮影中に橋本さんとほとんど会話をしなかったと明かし、「芝居を通して会話していきました。翔吾と佳菜子の関係は多く語られていなくて余白があります。みなさんで感じとりながら観てもらえたらうれしいです」。

映画『春に散る』大阪舞台挨拶の様子

 

夏の暑さより、映画はもっと熱い。

この日、舞台挨拶の前に大阪のど真ん中・道頓堀のトンボリステーションでの生放送に出演したお二人。短い出演時間だったらしく横浜さんは「もっと映画のことを語りたかった」とこぼします。一方の佐藤さんは「深作欣二監督の『道頓堀川』という作品ではじめてうかがって、ひっかけ橋を渡るシーンから撮った記憶があります。そのときの雰囲気は残っていて、なんとなく見たことあるなという気がしていた」と若いころの撮影に思いを馳せます。

 

舞台挨拶の最後には、これから作品を鑑賞する観客へメッセージが伝えられます。まずは横浜さんから「熱い作品になっていると思います。みなさんがこの作品を観て、なにか感じることがあったら、周りの人に伝えて作品を広めてもらえるとうれしいです。本日はありがとうございました」。

つづく佐藤さんは「お互いに話し合ったわけでもないのに、ペアルックのようなゆるゆるパンツ」と横浜さんと衣装が似ていることで笑いを誘い、「本日は暑いなか、ありがとうございます。映画はもっと熱いです。最後まで観たら、大きなお土産をもって帰っていただけると思っています。楽しんでいってください!」と締め、あたたかい拍手に包まれながら会場をあとにしました。

映画『春に散る』大阪舞台挨拶の様子

 

映画『春に散る』

2023年8月25日(金)より、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、MOVIX京都、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸などにて公開。

公式サイト:https://gaga.ne.jp/harunichiru/

masami urayama

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