展覧会「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」武勇も、怪奇も、コメディも。物語のある浮世絵がおもしろすぎる!

国芳から弟子たちへ−幕末明治に「芳」の系譜あり!―――幕末から明治にかけ歌川国芳の個性が弟子たちにどのように継承されていったのかをたどる展覧会「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」が現在、京都文化博物館で開催中です。(〜4/10まで)

名古屋市博物館のコレクションから選り抜かれた約150点の浮世絵は迫力満点な大作から、クスッと笑えるユーモラスなものまでバラエティ豊か。展覧会名に〈挑む〉とあるように、これまでの浮世絵展とは一味違う切り口で楽しませてくれます。

 

受け継がれる国芳イズムのなかに光る弟子の個性。対比の楽しさを楽しめる。

歌川国芳(1797−1861)は、旺盛な好奇心と柔軟な発想、豊かな表現力を武器として武者絵や戯画に新機軸を打ち出し、幕末の浮世絵を活性化させた絵師。現在でも「奇想の絵師」として高い人気を誇っています。

親分肌であった国芳のもとには多くの弟子が集い、なかでも「最後の浮世絵師」と称される月岡芳年(1839−1892)が有名。国芳の奇想を受け継ぎ、さらに和洋の融合も推し進めたとされる芳年は浮世絵のイメージをくつがえす作品多く残し、近年は再評価が進んでいます。

 

本展は、国芳と芳年のほか、芳年とともに国芳門下の双璧とされた落合芳幾(1833−1904)などにもスポットを当て、「芳ファミリー」の作品を紹介。ひとつひとつの絵を見比べていくと、国芳から弟子たちへ受け継がれていったイズムの偉大さ、さらにはそのなかで独自の絵を光らせていく弟子たちの個性を見出すことができます。似ているようで、違う魅力を放つ浮世絵たち。とくに人の表情に個性がでているので、“この絵師はこういう顔が好みなのかな”なんて考えながら観ていっても楽しいですよ。

歌川国芳「山海めでたいつゑ+天気にしたい 土佐鰹節」(1852年)

 

月岡芳年「古今比女鑑 秋色」(1875−1876年)

表現力豊かな浮世絵は、背後のストーリーとともに楽しんでほしい。

会場では、約150点の作品を5章にわけて展示。〈第1章:ヒーローに挑む〉では、歴史上や物語に登場するヒーローたちの勇ましい姿を描いた「武者絵」を紹介しています。荒々しく敵に立ち向かう勇者の姿をダイナミックに描いた浮世絵はアクティブで雄弁。少年漫画の扉絵のようなカッコよさと親しみやすさを個人的には感じます。(それは違うと怒られそうですが…)

歌川国芳「朝比奈三郎鰐退治」(1849年)

 

このように、浮世絵は物語をベースに描かれた作品も多く、お話とともに絵を楽しむとより一層におもしろさが増します。それを実感できるのが、〈第2章:怪奇に挑む〉で展示されている、「英名二十八衆句」。こちらは国芳の弟子である落合芳幾と月岡芳年が競作した全28図のシリーズで、歌舞伎の刃傷(にんじょう)場面が題材になっています。展示では作品ごとに題材となったストーリーが簡潔に説明されているので、ぜひともそれを読んで作品を鑑賞ください。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、ツッコミどころ満載です! 実は目を覆いたくなるような残虐性の高い作品も多いのですが、物語の内容や意味を知ると少し滑稽にも映るから不思議です。

また、この時代には絵にリアリティを与える印刷技術が進化しているのを見て取れます。血や雨の表現に見る細部のこだわりは必見。〈神は細部に宿る〉を実感できますよ。

落合芳幾「英名二十八衆句 邑井長庵」(1867年)

 

第2章をはじめとして本展には怖い作品やグロテスクな作品も展示。会場には、それらを回避できる「エスケープルート」が用意されているので、苦手な方も安心して鑑賞できます。

 

 

なぜ、すずめ? そこにもちゃんと理由があった!

第3章のテーマは〈人物に挑む〉。浮世絵といえば…とイメージしやすい「美人画」や「役者絵」を紹介しています。人物画では絵師ごとの個性がでやすいのか、国芳と芳年では表情や身体つき、しぐさの違いがよくわかります。“自分好み”を探してみてもいいのではないでしょうか。

 

〈第4章:話題に挑む〉では、国芳の戯画(滑稽な絵)などを展示。奇抜でユーモラスな作品が多く笑いを誘うのですが、表面のおもしろさに覆い隠された〈裏〉の顔もあり、その奥深さにうなります。

例えば、「里すゝ゛めねぐらの仮宿」では、人物はなぜか〈すずめ〉になっています。これは天保の改革で遊郭絵の出版が禁止されていたため、国芳はすずめを擬人化して描いたそう。さらに、すずめにしたのにも理由があって会場で詳しく解説されています。

歌川国芳「里すゝ゛めねぐらの仮宿」(1846年)

 

歌川国芳には10数人の弟子がいたといわれています。〈終章:「芳」ファミリー〉では、国芳のDNAをもつ絵師たちの浮世絵をずらり紹介。浮世絵にとどまらず、挿絵や新聞など幅広い分野で活躍していていく彼らの作品をたどると、「芳」の系譜の偉大さを改めて感じます。

月岡芳年「東名所墨田川梅若之古事」(1883年)

 

また、本展では京都・前田珈琲とのコラボコーヒーなど多彩なグッズが発売されています。なかでも個人的におすすめなのが「展覧会図録」。凝った仕様で楽しく見られ、わかりやすい解説を読むと作品の背景がより深く理解できます。

「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」展覧会図録

 

「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」

期間:2022年2月26日(土)〜4月10日(日)

開館時間: 10:00〜18:00 ※金曜のみ19:30まで(入室はそれぞれ30分前まで)

休館日:月曜日、3月22日(火)

会場:京都文化博物館

入場料:一般1,400円/大高生1,100円/中小生500円

※料金は全て税込。

※未就学児は無料(要保護者同伴)。

※障がい者手帳をご提示の方と付き添い1名までは無料。

※学生料金で入場の際には学生証をご提示ください。

展覧会の詳細は公式サイトをご覧ください。

公式サイト:https://www.ktv.jp/event/idomuukiyoe/

masami urayama

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