映画『十二単衣を着た悪魔』舞台あいさつ。三吉さんは強い女性の内と外の両面を演じてくれた。

悪女と名高い“弘徽殿女御(こきでんのにょご)”は早すぎたキャリアウーマンだった!? 誰もが知る“源氏物語”を斬新な視点で切り取り、新しいイマジネーションを与えた内館牧子の小説を映像化した映画『十二単衣を着た悪魔』。公開を記念した舞台あいさつを、監督である黒木瞳の第二の故郷ともいえる関西で11月14日に開催。黒木瞳監督とともに弘徽殿女御を演じた三吉彩花さんが登壇し、本作への想いを語ってくれました。

 

現代の男の子が、源氏物語の登場人物と出会って成長していく話にスカッとした。

この映画の原作は2012年に刊行された内館牧子さんの長編小説。それを読んだ黒木監督が映像化したいと願い、実現しました。「源氏物語のなかで弘徽殿女御は、帝の第一后なのにヒール役です。でも内館さんは、実は生きるチカラをもった素晴らしい人ではないのかということで構想をふくらませて異聞をつくられた。それを読んで、登場する自己肯定感の低い現代の若い男の子が、弘徽殿女御をはじめとした登場人物たちと出会って希望をもち、成長していく話にとてもスカッとした。これを映画にするとおもしろいだろうと思ったのです」。

 

また、「ここまで強い女性を演じたのははじめて」という三吉さんは、弘徽殿女御を演じるにあたり女優の先輩である黒木監督と特訓を重ねたことを明かしてくれます。「ゼロの状態から基礎を教えていただいて、少しずつ“自分の弘徽殿女御”が見えるようになりました」いうと、黒木監督も「三吉さんはすぐに殻を破り、彼女オリジナルの弘徽殿女御ができあがりました。どんどん成長してハマっていく姿にワクワクし、若い息吹を肌で感じてたのもしかった」と撮影時に感じた後輩女優の成長をうれしそうに語ってくれました。

 

強い人は、内面に悩みや悲しみをもちながら、ちゃんと二本の足で立っている。

この映画には、人生の指針にもなりうる名セリフがたくさん登場します。好きなセリフを問われた三吉さんは、「たくさんある」と悩みつつ「最初と最後のセリフ」だと教えてくれます。「この映画はほぼ順番に撮影していきました。改めて見ると、最初のシーンのセリフはまだ幼くて若く、最後のシーンのセリフには重みがあります。そこの違いが、おもしろいのではないでしょうか」。

 

弘徽殿女御は強いセリフも放ち、悪魔とも評されるキャラクター。演出する黒木監督は、強い人がもつ複雑な面を表現することを求め、演じきった三吉さんに満足しているといいます。「強い人の内面には、葛藤や悩み、つらいことや悲しみがあります。だからこそ、ちゃんと二本の足で立って、強くあらねばと思い、他人からは“強い女”と見られてしまう。三吉さんは、そんな内の弱さと外の強さをだしてくれました」。

 

黒木監督も、弘徽殿女御も、「ロック」な人。

三吉さんとって黒木監督は女優の先輩。ちゃんとしなくてはと最初は構えていたそうですが、実際に会うと「黒木監督はすごくロック。“なんでもやっちゃいなさい”という大きな懐をもっていて、お母さんやお姉さんのような感覚でまっすぐに向き合ってくれる、とてもステキな方」と評します。

 

ロックといえば、今作は時代劇でもありながら音楽にロックミュージックが使われており、主題歌はロックバンドOKAMOTO’Sが手掛けています。これも黒木監督の強い要望から実現したのだとか。「平安時代が舞台ですから雅楽も使用していますが、弘徽殿女御はロックだと最初から思っていました。ほとばしるパッションみたいなものを表現するには、絶対にロックだと。なので、主題歌もロックにしたくていろいろなアーティストを聞いたところ、OKAMOTO’Sの楽曲にハートを射抜かれました。お願いしたら、この映画のために“History”という曲をつくっていただけて、すごくうれしかったです」。

 

このほか撮影時の裏話なども披露して場を盛り上げた黒木監督は、最後に「源氏物語はむずかしいと思っている方もいるかもしれませんが、(本作は)弘徽殿女御を中心に“あのころの女性の品格はこういうものだったのでは?”と想像して内館さんが書いたもの。それを映像にできて本当にうれしく思っています。本日は見ていただきありがとうございます」と感謝を伝え、舞台あいさつを締めました。

映画『十二単衣を着た悪魔』

大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹などで公開中!

公式サイト:https://www.juni-hitoe.jp/

masami urayama

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